注文を終え、食事が運ばれてくるのを待つ間(食事が到着してからも)三人は騒がしくない程度のトーンで会話を交わしていた。
東方でのこと、ロイのこと(主に悪口)、錬金術や射撃のこと、クライサの武勇伝などなど。
その中で少年と少女が特に興味を持ったのは、クロフォードに関する話だった。
何故軍人になったのかとか、軍人になる前のこととか、プライベートのこととか。
その辺りは尋ねても答えてはくれなかったが、彼の錬金術の話ではクライサが、彼が並々ならぬ実力の持ち主だと話した時にはリオンが、それぞれ食らいつくように話を聞いていた。
「そういやさ、」
思い出したようにリオンが口を開く。次いで彼が目を向けたのは、隣の席に座る空色。
「司令部にいた時、アームストロング少佐に会ったんだけどさ」
エドワードたち、中央にいるんだってさ。
彼の言葉に、少女の手から滑り落ちたフォークが床とぶつかり音を立てる。
「図書館に籠ってるらしい」
「そういうことは早く言え!!」
落ちたフォークを拾いつつリオンを怒鳴りつける少女に、クロフォードは目を丸くした。何故エルリック兄弟の話で彼女の様子が一転したのか、わからない。
「瞬間記憶能力者のくせに、なんでそういうこと言うのは忘れるのさ!」
「忘れてねぇよ。わざとだ」
「なお悪いわ!!」
エドワードたちが中央にいる。
その言葉にクライサが異常な程反応したのは、正直、兄弟に会いたいからという理由ではない。
目的は、彼らと行動を共にしている少女。
「ああ……そういえば、図書館にはレイもいたな」
グラスに伸ばした手が、不自然に止まった。今まさに脳内に姿を浮かべた少女の名を、リオンでなく、クロフォードが口にしたからだ。
レイ・ウォーカー。
黒白の錬金術師として名の知られた、クライサやエドワードたちと同じく若すぎる軍の狗。
同じ年頃の同性の友達というのが少ないからか、クライサはレイを特別大切にしているところがある。
「准将……レイを、知ってるんだ?」
「ん?ああ………よく、な」
これだ。
この感覚だ。
あの廊下で、初めて目が合った時、感じたものは。