「……って、んなワケねーよな。姫、この人誰?」
「わー、さすがリオン。ナイスな反応だよね、こーのリアクション泥棒」
「いやー、二人揃って変わった奴だなお前ら」
すぐさま普段通りの顔つきに戻ったリオンに、クロフォードは再び楽しそうに笑った。少年に思いっきり指を差されているにも関わらず。
「オレはクロフォード・エドワーズ、地位は准将だ。よろしくな、えーと…」
「アサヌマです。リオン・アサヌマ少尉。よろしく、エドワーズ准将」
「ああ」
一応敬礼をする少年、それに頷きで応じる男。
しばらく二人の挨拶を眺めていたクライサが、リオンに向き直った。
別件を任せていた連れ、というのは言わずもがな、この少年のことだ。
建物の外で待ち合わせとのことにしておいたのに、なぜ彼がこの場にいるかはよくわからないが、まあ手間が省けたというわけで。
「リオン、仕事終わったんなら外行こーよ。お昼食べたい」
「はいはい…」
「なんだ、昼飯まだなのか」
司令部を出るべく足を踏み出したクライサたちの背後で、問うように彼が言った。
振り返った彼らが見たのは、先程と変わらない、エドワードより幾分大人びた(大人なんだけど)笑顔。
実はオレもまだなんだ、と続けられた言葉に、リオンは更に続くであろう台詞を予想し、クライサは首を傾げた。
「奢ってやるよ」
さっすが准将!
飛びつかんばかりの勢いでクロフォードに駆け寄ったクライサに、リオンが呆れた顔で溜め息をついたのは言うまでもない。
司令部を出て、セントラルシティの一角で営業するカフェに足を踏み入れた。
クロフォードが本来は仕事をしなければならないとかサボリ中だとかいうことは、任務を完遂した自分たちには関係ない。
というかせっかく准将自ら奢ってくれるとおっしゃっているのですから、わざわざ断るほうが失礼というもの!(別にお金には困ってませんけど)
それほど知名度が高くないのか、店内にはクライサたち以外には二組しか客がいない。
落ち着いて食事をするには丁度良いが、いい店なのに、とクロフォードは少し残念がっているようだ。