「……エ、」
仕事の関係上、久しぶりにやって来た中央司令部。
用を済ませたらそのまま数日間の休暇に入っていい、というお達しを上司から貰っているため、自分でも驚く程の速さで仕事を終わらせ軍法会議所を後にした(今回はヒューズに用があったのだ)。
別件を任せていた連れと合流するため、落ち合う場所へ向け足を進める。
その途中のことだった。
廊下の角を曲がってすぐ、青い軍服が視界いっぱいに広がった。
角の向こう側からやって来た軍人にぶつかりそうになっているのだと即座に理解し、踏み出しかけた足を強引に後方へ持っていく。瞬時に判断した甲斐あって、相手の胸にダイブすることは避けられ、互いに足を止めた。
とりあえず謝ろう、と視線を上に上げる。そして、固まった。
鮮やかな金色の長い髪をポニーテール気味に纏めた、珍しい金の瞳の男。見慣れた色彩、しかし慣れない雰囲気。言葉が口をついて出ていたことに、自分の声を耳にしてから気が付いた。
「エドがでっかくなった……!!」
くもりトキドキ晴れ
「……って、んなワケないよね。初めまして、エドワーズ准将」
「なかなか面白いリアクションするな。初めまして、氷の錬金術師」
わざとらしいまでの驚き顔を一転させ、少しばかり後ろに下がって(近すぎたから。決して後退ったわけじゃない)会釈した。
その行動に、彼ーークロフォード・エドワーズは、楽しそうに笑う。
長い金髪に金色の眼。顔つきまで、あの鋼の錬金術師そっくりだ。
エドワードが成長したらこうなるんじゃないかと思える容姿を持つ彼を、クライサは兄から聞いて知っていた。
ロイよりも若いのに准将の地位に就く軍人。
国家錬金術師の資格を持ち(二つ名は確か『細氷』だったろうか)、トップクラスの剣術・体術を扱える男。
こういう人間を、人は天才と呼ぶんだなと、話を聞きながらぼんやり思っていた覚えがある。
いや、しかし。実際に会うのは初めてだが……本当に似ている。大人版エドワード、と称されるのもわかる気がする、というか大納得だ。