(あ、)

大男と向き合っていたレイは、視線の先の少女が手にした物を見て、ピンときた。
少女が蛇口を捻り、ホースの先を抓んだと同時に男から距離を取る。

「ぶはっ!?」

予想通り。ホースから発射された水が、勢い良く男の顔を襲った。
クライサの前にいる男たち二人も同様に、その顔を腕で拭っている。続け水を撒いている彼女の手によって足元はビショビショだ。

「これが何だってんだ!!」

一通り水を拭い終えた男が、懐から出したナイフを握りレイへと斬りかかる。クライサたちのほうに気を取られていたため、一瞬対応が遅れた。
避けはしたものの、刃は僅かに頬をかすったらしく、そこからは少量ながらも血が流れる。レイは小さく舌打ちしたが、さして気に留めることなくそれを手の甲で拭った。

だが、クライサは違った。

大きく目を見開き、ホースを取り落とす。隙だらけのように見えた彼女に男たちは襲いかかろうとするが

「……覚悟しろよ、アンタら」

呟くように言った少女の目に圧倒され、動きを止める。レイたちもまた、そのただならぬ様子にクライサへと目を向けていた。
ロイとエドワードたちが漸く彼女らの元に到着したのとほぼ同時に、少女は勢い良く両手を鳴らす。

「女の子の……レイの顔に傷なんかつけてんじゃねぇぇぇえっ!!」

「口調変わってるよ、クライサ…」

右手を握り締め、両手を合わせた際の勢いのまま地面を殴り付ける。途端そこから青白い光が発生し、

「ぐぉ!?」
「へぶっ!?」
「な…何だコ…ぐほぁっ!?」

男たちの足元の水から錬成された氷の礫(つぶて)が、彼らの顎や腕、足をめがけ飛び出した。それらも一応はコントロールされているらしく、クライサ自身やレイを襲うものはない。

幾つものそれに体中の至る所を攻撃され、なす術も無く地面へと倒れ込んだ男たち。三人とも白眼をむき、起き上がる気配はないようだ。





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