だがそれを少女は片手で軽々と受け止め、男の手から奪い取るとお返しとばかりにその頭へと振り降ろした。
そのまま力無く地面へと倒れ込むが、あくまで軽く殴っただけなので大事には至っていない筈だ。
「さて、大人しく連行されますか?」
「あとはアンタだけだよ。もう諦めたら?」
残った一人に目を向ければ、男は悔しげに顔を歪めている。握り締めた拳はワナワナと震えていた。
「こんな…こんなチビガキ共にーーッ!!」
走り出した男。その向かう先にはクライサとレイ。無駄な抵抗だと分かってはいるが、素直に連行されるわけにもいかないのだろう。
やれやれと溜め息をつくレイの隣で、クライサが呟いた。
「一番言っちゃならんこと、言ったね」
「クライサ?」
向かってきた拳を左右に分かれて避ける。その間に窺った少女の表情は、笑ってはいたが、背後に修羅のようなものが見えた気がする。
「償ってもらうしかないなぁ……全力で潰す!!」
「クライサ…キャラ変わってるよ…」
二人同時に繰り出したのは、回し蹴り。レイは男の腹部に、クライサは後頭部に。一度に二方面からの強い衝撃を受け、当然の如く男は崩れ落ちた。
「あたしをチビって言ったこと、地獄で後悔するがいいさ!」
「死んでないって…」
で。
「とりあえず縛り上げよっか」
「他に仲間がいるか吐かせるのが先じゃない?」
地面に転がった男五人を一瞥し、レイたちは会話を続ける。
一人や二人ならまだしも、五人ともなると司令部へ連行するのも一苦労だ。ふん縛って憲兵たちに任せようか。
そんなことを考えていると、背後から呻き声が聞こえてきた。振り返れば男たちのうちの一人が身動きし、うつ伏せになったまま少女たちへと顔を向ける。
「「!!」」
その手にしたリモコン型の物を視界に入れた瞬間、二人は同時に目を見開いた。
「反乱分子に栄光あれ…死ね、軍の狗!!」
手の中のスイッチを押した瞬間、周囲一帯を眩い光が包み、爆音が鳴り響いた。