「小さな暴れ馬、だっけ?大佐が言ってたけど」

「そんな余計なこと言ってたの!?…あんのバカ兄…!!」

(ん?)

「兄…?」

クライサが不満気に漏らした言葉に首を傾げる。
彼女のファミリーネームはリミスクで、ロイはマスタング。容姿も、兄妹だとは思えないくらいには似ていない。

「ああ、違う違う。本当の兄妹じゃないよ」

小さな頃からの知り合いであるため、その頃からの呼び名が定着してしまったのだ。だがクライサは彼を兄だと、ロイもまた彼女を妹だと思って接しているため、ほとんど兄妹と相違ない状態だったりする。

(なるほど。だからあんなに嬉しそうに話してたのか)

妹を想う兄の口調だったのか。漸く解った。

「大佐はお兄ちゃんとしか思ってないけど…レイといちゃつかれると正直ムカつくね」

「あたしに兄を取られるのが嫌、ってこと?」

自分だけを可愛がってくれる兄を他人に奪われるのが嫌なのか。子どもらしい嫉妬心に笑みが溢れる。
が。

「ううん。お兄ちゃんにレイを取られるのが、嫌なの」

そう真顔で言われてしまった。これはどう返すべきなのだろうか。
というかコレはアレなのか?世に言う

(逆ハー…?いやでもクライサは…逆?えーと…)

返答に困っていると、クライサがこちらを見ていた視線を外し、街並みのほうへ目を向けた。何事かと思いそちらに目をやると

ドォンッ!!

「「!!」」

突如鳴り響いた爆音。上がった火の手。真っ黒な煙が立ち上り、街人たちが逃げるように走って行く。

「レイ!」

名を呼ばれ、そちらに目を向けると、軍人の顔をした少女がこちらを見ていた。

「…しょうがないなぁ」

本日何度目になるかも分からない溜め息と共に立ち上がると、そう来なくちゃ、とクライサは笑った。

「多分最近騒がれてる爆破テロだと思う」

「まったく…大佐たちは何してんだか」

「…ま、とりあえずは」

爆発が起きた地点まで駆ける。まだ憲兵たちは集まっていない。
路地に入ると、見た目からして怪しい数人組の男たちを発見した。同時に両手を合わせ、不敵に笑うクライサとレイ。

「「お手並み拝見、ってね」」





つづく?



【H18/08/19】




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