stage 3
捕まった。
「名前は?住所は?電話番号は?」
完全なるナンパ男。ある意味最も厄介な奴に捕まってしまった。
「…レイ・ウォーカー。住所と電話番号は教える義務が無い」
「レイ?もしかして黒白の錬金術師か!?うわ、一度会ってみたいと思ってたんだよ!よろしく!」
「…リオ。レイ、引いてるよ」
黒髪のポニーテールによって、童顔が一層幼く見える青年。リオ・エックスフィート。普段なら冷静で賢い印象を受ける彼なのだが、
「クライサの友達だったのか?もっと早く紹介してくれよなー。あ、俺はリオ・エックスフィート。よろしくな、可愛い嬢ちゃん」
「……はぁ」
美人に目が無いのが玉に傷。ナンパ男になってしまい、口数も多くなる…というか
(マシンガントーク…)
うんざりとした様子で、レイは深い深い溜め息をついた。
出口を出た瞬間、クライサは見覚えがある人物と目が合ってしまった。
それがリオである。彼は以前東方司令部に勤めていたのだが、今は中央のアームストロングの元で働いている。今日はロイに用があってわざわざ東部にやって来たらしいのだが……これだ。
「お茶しに行こうぜ?奢るからさ」
「嫌」
「いい店があるんだ。珈琲も美味いしデザートも豊富、サービスもなかなかのものなんだ」
「こらリオ」
「決まりだな!さ、行こうぜ」
「上官命令だよ。下がれ、エックスフィート大尉」
そのままレイを連れ去りかねない彼に、クライサは真顔で告げた。滅多に使わない『上官命令』。
ここまで邪魔されると、さすがのクライサも我慢の限界である。不機嫌極まりない表情で睨み付けられれば、それ以上逆らうことなど出来ず、リオは渋々レイから離れた。
(ま、住所や電話番号やスリーサイズぐらい、ちょっと調べればすぐに…)
「エックスフィート大尉」
良からぬことを考えていると、不意に呼ばれた名前。そちらに目を向けると、銀色の少女が微笑んでいる。
思わず高鳴った胸に動揺するが、告げられた言葉に
「下手なことは考えないほうが身のためだよ」
その恐ろしさを思い知った。