stage 2
「姫さん」
「お姫」
食堂に入ると、まず目についたテーブルに着いている二人と目が合った。
レイの愛称を呼んだのがハボック、クライサの愛称を呼んだのがブレダである。
「…黒白ちゃんって姫なの?」
「クライサだって」
似たような…というかほぼ同じ愛称をつけられてしまった。呼ぶ人間が違うとはいえ、これは判別しづらい。
「んなことはいいから、とりあえず座れよ」
「そうそう、おにーさんたちと一緒に語り合おうぜ?ほら、座れって姫さん」
ハボックに腕を引かれ、半ば強制的に彼の隣の席へと座らされてしまう。クライサはと言えば、ブレダの手によりレイと同じ状況にされていた。
「おにーさん、ねぇ…」
「オッサンの間違いでしょ」
「「オッサンだと!?」」
溜め息混じりに漏らすと、男たち二人が食い付いてくる。いくら少女たちがまだ幼いからとはいえ、オッサン呼ばわりは許せないらしい。
「オッサンたちの相手する気は無いの。行こ、黒白ちゃん」
食堂は軍人たちでいっぱいだ。空いているかと思って様子を見に来たが、これなら外に食べに出たほうがいいだろう。そう思いレイを促しつつ席を立つと、
「たまにはそのオッサンたちにも付き合えよ」
「人生相談も恋愛相談も受けるぜ?」
(またか…)
席を立ったレイのコートの裾を掴む男が一人。ハボックだ。
ただ呆れるレイ。クライサが、誰もが見惚れる笑顔を浮かべ、その両手を合わせた。
「黒白ちゃん、じゃなくて名前でいいよ。レイで。あたしだってクライサって呼んでるしさ」
「そう?じゃあ遠慮なく、レイって呼ばせてもらうね」
出口に向かい廊下を歩き続ける彼女たち。
二人が後にした食堂。そこには、氷像と化したハボックとブレダの姿と、それに呆れ果てるホークアイの姿があった。