東方司令部の資料室。
気になる資料を探し、本棚に並ぶファイルの背表紙を眺める。
(あった)
見つけたそれに手を伸ばした瞬間、すぐ横から同じファイルに伸びた手。
「「あ」」
隣に立つその人を確認するのと、お互いの手が触れたのは同時だった。
first contact
ポニーテールにされた銀髪。ガラスのような銀の瞳。軍服でなく、自前らしい長い黒のコート。
(この人、確か…)
膝ぐらいある長い空色の髪。同色の大きな眼。軍司令部内だというのに、軍服でなく全くの私服。
(この子、もしかして…)
「……黒白の錬金術師?」
「……氷の錬金術師?」
お互いを指差し、その二つ名を呼び合った。
噂には聞いたことがあるが、実際に会うのは初めてだ。
「…えーと」
まず問いに答えたのは空色の少女。
「あたしはクライサ。氷の錬金術師、クライサ・リミスク」
改まった自己紹介に、今度は銀色の少女が口を開く。
「あたしはレイ。レイ・ウォーカー。黒白の錬金術師だよ」
髪の色も眼の色も、服装も違う少女二人。彼女らに共通していることは、軍には珍しい幼い少女であることと、軍の狗ーー国家錬金術師であることだ。
一方はレイ・ウォーカー。黒白の錬金術師。正規の軍人ではないが、その実力は上官である東方司令部司令官も認めている。
もう一方はクライサ・リミスク。氷の錬金術師。こちらは正式に少佐の地位に就いており、毎日のように続く激務をこなしている。
そんな二人が、こうして運命的(と言えるかは別として)に出会ったわけだが。
「……お昼食べた?」
「ううん」
「一緒に食べる?」
「…うん」
二人して狙っていたファイルはとりあえずレイが持ち、彼女らは共に資料室を後にした。