「…こいつには…弱点も無いって言うの…!?」

勢いよく合成獣に向かっていった氷の針は全て、一本残らず、その身の前に砕け散った。驚愕に目を見開くイルミナの横で、クライサが床に膝をつく。

「あんまり無理しないほうがいいんじゃないの?お嬢ちゃん。……骨、大丈夫?」

「……余計なお世話だよ」

悔しいが、男の言葉通りだ。

(肋骨…イッたかも)

頑丈に出来ている氷を全て防いだ身体だ。その固さを持つ尻尾による攻撃を腹部に喰らい、無傷でいられる筈がなかった。
イルミナに視線を向けると、彼女のほうは幸いそれほど傷も深くない様子で、ひとまず安堵の息を吐く。

「君たちはこの合成獣には勝てないよ。なんてったってコイツはたくさんの合成獣を合成させて巨大なものにし、更にダイヤモンドと合成させたんだから」

合点がいった。ならば、その表面はダイヤモンドと同じ固さを持つということか。世界で最も固い、と言われるダイヤモンドと。

「剣で斬ることはおろか、ハンマーで殴ったって傷一つつかないよ。…もう諦めてやられちゃいなよ」

(……ダイヤモンド?)


ああ、そうか。
視界に合成獣の足が動くのをとらえつつ、クライサは口元に笑みを浮かべた。

「…イルミナさん。あたしが合図したら、一気にアイツに斬りかかって」

クライサの立っていた場所に鋭い爪が突き刺さる。その前足を足場にして合成獣の胴付近にまで駆け上がると、両手をその胴体についた。途端、閃光が走る。

「無駄だって…何度言えば分かるんだよ!!」

クライサが立ったままだった前足に尻尾を勢いよく振るわれ、そこから払われるようにして少女は落とされる。

「クラちゃ…」

「…ッ今だよ!!」

そう叫んだ瞬間、彼女は、勢い良く床に叩き付けられた。ダァン、と響き渡る音。イルミナは、振り返らなかった。

「あははは!まず一人…次はおねーさんだよ!」

再び襲いかかる爪。しかし、彼女はそれを防ごうとはしない。


ゴトン

音を立てて、床に転がった。

「…な……」

真っ赤な血が広がる。


「どうしてだ…なんで斬れる…!?」






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