「まずはおねーさんたちから血祭りにあげようか」
男がニタ、と笑う。その表情に気色悪さを覚えるより早く、クライサたちを鋭い爪が襲った。
「ナメんなっつーの!」
床に突き刺さったそれをジャンプで避け、両手を合わせ大量の氷のナイフを錬成する。それを合成獣に向け一斉に放つが、
「……!?」
高い音を立ててその身に弾かれた。信じられない、と目を見開くクライサの横でイルミナが駆け出す。
「無駄だよ」
その足に振り下ろした剣すらも、合成獣の体に弾かれ斬ることが出来ない。
「刃物がきかないなら…っ!」
再度掌を合わせ、勢いよく床に手をついた。ピキ、と高い音を立てながら、クライサの手元から床が凍りついていく。
氷が合成獣の四つ足を捕えた時だった。
「ーーっ!!」
キメラの長く、大きな尻尾がクライサを襲う。床に手をついていたために避け損ねてしまった少女はそれをまともに喰らい、背中から壁へと激突した。
「くっ…」
「クラちゃん!!」
足は凍らせた、と思ったのが油断になったのだろうか。少女の元へ駆け寄ろうとしたイルミナは、自身に襲いかかるそれへの対応が遅れた。
「……な、んで…」
目の前に広がる大きな手。いや、前足と呼ぶべきだろうか。そこから生える鋭い爪の二本を剣で防ぐ。しかし、残っていた一本は防ぎ切れず左肩に食い込んでいた。
(どうして?)
凍らせた筈なのに、何故動ける?
「簡単なことさ。僕の合成獣が強いからだ」
楽しげに言う男に、少女が、キレた。
「……ざけんなよ」
冷気が室内を包んだ。その様子に合成獣は手を引き、肩の出血に眉を寄せながらイルミナが距離を取る。
「ボスには弱点がつきものだよ。どんなに頑丈だろうと、どこかに弱点がある筈だ」
その光景にイルミナは目を見開いた。合成獣の周囲を、幾千幾万本もの氷の針が囲んでいる。確かに、これだけの数の針に攻撃されれば何処かしらにある筈の弱点にも攻撃が当たってしまう。
「いっけーーッ!!」
針は全て合成獣を襲った筈だった。
「………嘘…」
「だから言っただろ?無駄だって」