ひと通り建物内を見回ったところ、この研究所は三階建てだということの他に、地下もあることが分かった。
上か下か、どちらにこの事件の首謀者となる人物がいるか分からない。エドワードとアルフォンスは下に、クライサとイルミナは上にと二手に分かれ、その人物を探すことにした。
「…それにしても、どこにあんな数の合成獣がいたんだろう…」
「だよなぁ…庭で飼ってた、って言うには狭い庭だったし。やっぱり建物内か?」
地下に繋がる階段を駆け下りながら、エドワードとアルフォンスは疑問を口にする。あれだけの数の合成獣が庭中にウヨウヨ、というのは考えにくい。かといって普通の犬猫のように室内を歩き回っているとも思えない。
だったら
「……地下、とか?」
地下から直接外に繋がる出入口があるとしたら、合成獣を外に出すのも楽な筈だ。地上に檻を作ることだってもちろん可能だが、一階を見て回った限り普通の研究室しかなかった。ならば、地下に檻がある確率は高い。
「兄さん」
「ああ」
広い外と違い、ここは屋内。狭い場所で多数を相手に戦うのは、はっきり言って不利である。
『油断大敵』
「……だな」
「……だね」
クライサとイルミナは、見つけてしまった『それ』に息を呑んだ。
「いらっしゃい。ちょうどいいところに来たね」
最上階である三階に辿り着くと、彼女らはその階の全ての部屋を回った。
そして、見つけてしまった。一番大きな研究室で、部屋の中央に佇む一人の若い男を。そして、その背後にいる巨大な合成獣を。
「ちょうど今、この合成獣が出来たところだったんだよ。僕の……最高傑作が」
門の外に溢れていたものの五倍は大きいそれ。あまりにも多くの動物たちを合成させ過ぎたのだろうか。既にそれは、何を合成させた合成獣なのか分からなくなっていた。
「…アンタの目的は何?」
「目的?そうだね…今までは最高の合成獣を作るのが僕の目標だったけど、それを達成した今の僕の目的は……」
軍を潰すことかな。男の言葉と同時に、クライサたちの身に凄まじい殺気が降りかかる。男のものではない。その背後の、巨大な合成獣のものだ。
「……なるほど。軍に恨みがあってそんな研究をしていたのね」
再度息を呑み、イルミナは紅の刃を握り直した。