「…さて、そろそろ仕事に取り掛かるとするか」
研究所を見据えたロイの言葉に、クライサやエドワードたちを含めその場にいた全員の顔つきが変わる。
「大佐、研究所の包囲完了しました」
「ああ、ご苦労。そのまま指示があるまで待機していてくれ」
「了解っす」
「…あのー…」
ロイとハボックのやり取りを聞いていたアルフォンスが口を開く。
「まだここが合成獣の住み処とは決まってないんでしょう?この研究所の持ち主に無断で包囲なんかしちゃって、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。ここ、怪しいなんてもんじゃない。……ビンゴだよ」
アルフォンスの質問に答えたのは、ロイではなくクライサだった。その双眸は研究所の門をとらえている。
「わかんない?この尋常じゃない殺気。間違いない、ここはクロだよ」
そう告げた瞬間、ロイが片手を挙げた。それに反応し、研究所を包囲していた兵たちが一斉に銃を構える。
門から、それが姿を現した。
「ほらね」
先ほど街でクライサたちを囲んでいたよりも多くの合成獣たちが、門から一斉に外へ出てきた。研究所を囲む人間たちを殺さんと駆けて来る彼らに、ロイの合図により兵たちの手にした銃が火を噴く。
「イルミナ、行けるか?」
「ええ、こっちの指揮は任せたわよ、ロイ」
合成獣たちを錬成し、指示を与えている人間が必ずいる筈だ。その人物を探すため、イルミナ、エドワード、アルフォンス、そしてクライサが中に潜入することになっていた。
「行くよ、エド、アル」
「うん!」
「おう!正面突破!!」
「さすが、噂の三人組ね。頼りにしてるわよ!」
「「「了解!」」」
まずは中に入るため、門から溢れる合成獣たちを突破しなければならない。イルミナは剣を抜き、エドワードは右手の機械鎧を甲剣に変え、勢いよく走り出した。
「じゃ、行ってきます」
ロイに笑みを投げ掛け、アルフォンスと共に、後に続くようクライサは駆け出した。