「それにしても…」
ロイの視線がクライサから外れると、少女もまたその先に目を向け、苦笑した。
「鋼のは随分イルミナに気に入られたらしいな」
「感心してないで助けろボケ大佐…!!」
「良かったね、兄さん。気に入ってもらえて」
「良くねぇ!!」
「あら、アル君だって大好きよ?たとえ見た目は鎧でも、中身はすごくいい子だし」
「わ、ありがとうございます」
「諦めなよエド。アンタ可愛いんだからしょうがないって」
「可愛い言うなぁーーッ!!」
多少彼が暴れてもビクともしない力でエドワードを抱き締める、イルミナの姿。すっぽりとその腕に収まった少年の姿に、一人は苦笑し、一人は意地悪い笑みを浮かべ、一人は羨ましがっていた。
「ん、でもやっぱりクラちゃんが一番ね」
「お、久しぶりの感触」
「やっと解放された…」
今度はクライサに抱きつく。エドワードと違い、こちらの反応は良好だ。
「…こらイルミナ。仕事のために来たのだということを忘れるな」
「あら、クラちゃんに抱きついた途端にそれ?相変わらずね、シスコンロイロイ」
「誰がロイロイだ」
ロスタリアに出現するようになった合成獣は、もちろん以前からいたわけではない。
住民たちの通報により軍は動き出し、合成獣たちが何処からやって来るのかを調べていたところ、街の外れにそれらしい研究所を発見した。
軍用車に乗せられその付近までやって来たクライサたちだったが。
「はぁ!?なんであたしたちまで協力しなきゃなんないの!?」
「軍の仕事だろ!?オレたちを巻き込むな!」
「君たちは軍の狗だろう。上官である私の命令に逆らえると思うなよ」
「「ぐっ…!!」」
…というわけで。成り行きで協力させられることになってしまったのである。
「ごめんねー、国家クラスの錬金術師がいてくれると助かるのよ。お礼はするから、協力してくれない?」
「んー、イルミナさんがそう言うなら…」
「クライサ!?私と反応が違い過ぎないか!?」
ちなみに、イルミナは錬金術師ではない。だが、その剣の腕によって、女性にして中佐という地位を確立しているのだ。