「……………強」
それからは驚きの連続だった。
たくさんの合成獣たちを一撃で倒していき、仲間を呼ばんとしているものは声を上げる前に始末し、それでも彼女は返り血を浴びてすらいない。
それだけの疾さを持つ彼女を、クライサは知っていた。
「よし、とりあえず片付いたわね。…大丈夫だった?あなたたち」
剣に付いた血を払うと、女性はこちらに振り向いた。先程まで合成獣たちと戦っていたとは思えない程の明るい笑顔に、エドワードは面喰らってしまう。
しかし、クライサの反応は違っていた。
そして同様に、クライサと目を合わせた彼女も固まった。
「……イルミナさん…?」
「……もしかして、クラちゃん?」
一人、ついていけていないエドワードが首を傾げる。そして彼女らがお互いの名を確認してから、彼は疑問を口にした。二人は知り合いなのかと。
答えはイエス。エドは知らないんだね、というクライサの言葉で、彼女の紹介が始まった。
彼女の名はイルミナ。
地位は中佐で、ロイやヒューズの士官学校時代の同期にあたる。
以前クライサが中央に住んでいた頃、また東方司令部で働いていた頃にも何度か会う機会があり、その度に楽しく会話を交した覚えがある。
「こっちはエドワード・エルリック。聞いた事あるでしょ?何かと噂の鋼の錬金術師」
「ああ、君があのエド君!一度会ってみたいと思ってたのよ。私はイルミナ・ウェイクフィールド。地位は中佐で、南方司令部で働いてるの」
クライサの紹介を受けると、少年は目の前の女性に向かい軽い会釈をする。イルミナはといえば、エドワードの頭の先から足元までを、まるで品定めでもするかのように視線を辿らせていた。
「よろしく、ウェイクフィールド中佐」
「ああ、イルミナでいいわよ。長いでしょ?」
握手でもとエドワードは手を差し出す。あ、とクライサが声を漏らした。
「エド。気をつけてね」
「へ?」
差し出した手をイルミナの手が握った瞬間
「イルミナさん、無類の可愛いもの好きだから」
「噂通りの可愛さね!お姉さん嬉しいっ!!」
「んぎゃあぁぁぁあッッ!!」
勢いよく抱き締められた。