合成獣ごときに負けるようなヤワな鍛え方はしてない。しかし
「数が多いんだよバカヤローッ!!」
その数に、さすがの彼女らも苦戦を強いられる。
「クライサ!そっち行ったぞ!!」
「まだ来るか!!」
倒しても倒しても、次から次へとわいて出てくる。一体一体はさほど手強くもなく、武器無しでも相手出来るのだが、十体もいればそうも言っていられなかった。また、一体が吠える。
「あーっ!!もうこれ以上呼ぶなっつーのに!」
初めにクライサたちを囲んでいた合成獣たちを全滅させても、その声によって仲間を呼ばれてしまい、絶え間なくその相手をしなければならなくなってしまったのだ。ワラワラワラワラ。一体何処からやって来るのやら。
「くそ、街中でこれだけ暴れてても窓すら開けねぇのかよ、この街の奴らは!」
出て来られても邪魔だが、かといって誰か襲われているのに完全無視も無いんじゃないか?どれだけ冷たい奴らなんだ。
(…いや、そうじゃない)
「それだけ酷い目に遭った、ってことか」
『街の人も何人もあの化物にやられて』
(殺されたの、かな)
何人も。
この、合成獣たちに。
「クライサッ!!」
しまった。戦いの最中に考え事をするなんて……なんて、自分らしくない。
目の前に迫った、鋭く尖った爪。防御も錬金術も間に合わない。
目を瞑る暇すらなかったのに、何故か、現状を客観的に見る余裕だけはあった。
(15歳か…死ぬには早すぎるよねぇ…)
死を覚悟したその瞬間、目の前を影が横切った。クライサに届くことなく落ちた爪。その腕は肩から切断されたように地に横たわり、合成獣は喚き声を上げる。
足から力が抜け、クライサは立っていられなくなり座り込んでしまった。
「大丈夫か!?」
傍に駆け寄ってきたエドワードの声に頷きを返しつつも、視線は前方に。前に立つ、人物の背に。
「まったく。数だけは多いのね」
青い軍服に身を包み、長い銀色の髪を携えた女性。
クライサたちに背を向けた状態で立っているため、その表情は窺えない。
彼女は紅い刀身の剣を握り直すと、合成獣の大群に向かい走り出した。