突然のことだった。
話を聞こうと、少女に近付こうとした瞬間、

「うおっとぉ!!」

「クライサ!大丈夫!?」

「ん、平気。……いきなり何なんだろうね、コイツは」

背後に強い殺気を感じ素早く身を屈めると、頭上を巨大な何かが通過した。
目の前に着地した『それ』の足を払うよう、屈んだまま蹴りを繰り出すと、『それ』は後方に跳びクライサたちと距離を取る。

「ひっ…!!」

「…もしかして、化物ってアレ?」

「そう、です。街の人も何人もあの化物にやられて…」

怯えた少女の言葉に頷くと、金髪の少年ーーエドワードは、彼女を安全な場所に避難させるよう弟のアルフォンスに言った。彼はそれに声で返し、すぐさま少女を連れてその場を離れる。『それ』と向き合っているのは、エドワードとクライサの二人だけだ。

「なんでこんな街のど真ん中に、合成獣(キメラ)がいるんだよ…!!」

『それ』の頭部は獅子、しかし胴部分は爬虫類のそれ、その上背からは大きな羽根が生えている。どこから見ても、その異様な姿をした生き物は、錬金術により動物同士を合成させた合成獣であるとしか思えない。なるほど。

「コイツのせいで街の人たちは家に引き込もってる、ってわけだね!」

言うと同時にクライサは駆け出した。合わせた両掌を地面につき、剣の柄を錬成すると、次いで空気中の水分から氷の刃を作成する。
合成獣は少女が駆け出すと同時に大きく吠え、彼女に襲いかかった。その鋭く伸びた爪を、少女を貫かんと振りかざすが、クライサはジャンプひとつでそれを避ける。

「悪さも大概にしやがれ!!」

鋭い剣先が合成獣の眉間に突き刺さる。夥しい量の出血と共に、巨体が地面に沈んだ。

「口ほどにもないね」

「ていうかソイツ何も喋ってねーし」

「うっさい」

一仕事終えエドワードの元に歩み戻ってきたクライサに、少年は苦笑する。
だが、その顔はすぐに強張った。

「どうしたの、エーー」

クライサもまた同様だ。周囲を見渡すと、頬を一筋冷や汗が伝った。

「…おいおい…」

「聞いてないよ…?何体もいたなんて」

先程の一体の声を聞き付けたのか、十数体の合成獣が、完全に彼女らを取り囲んでいた。






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