『紅い秘石』
その噂を聞き付けた彼らがやって来たのは、東部と南部の境界に位置する街。
商業都市、ロスタリア。
united front
「……話が違う」
駅を後にし、街のメインストリートに出てからの開口一番。
空色の少女ーークライサは、不満げに顔を歪めて呟いた。
「……ここって、本当にロスタリア?」
「駅名はそうなってたよ」
「……本当に?」
「クライサ…気持ちはわかるけど、いい加減認めようよ」
「誰だよ、『賑やかな街だ』なんて言った奴……人っ子一人いないじゃねぇか」
そう。列車の中で話しかけてきた親子連れに目的地を話したところ、
『ロスタリアは商業都市と呼ばれていて、街中にたくさんの店がある。昼も夜もうるさいくらいに賑やかな街だよ』
と教えてもらったのだ。
それなのに、目の前の通りには人影どころか犬猫の影すら見当たらない。通りに面した店も全て閉まっており、窓も完全に閉ざされカーテンによって中も見えない。
メインストリートを進んだ広場に出ても同じだった。遊び回る子どもも、楽しげに話す大人たちの姿もない。街全体が静まり返ってしまっているようだ。
「おにーさんたち、お客さん?」
「うおっ!?」
「エドうるさい」
「し、しょうがねぇだろ!?マジでビックリしたんだから!」
「兄さんもクライサもちょっと黙ってて!……えーと、君はこの街の子?ボクたち旅をしてて、初めてこの街に来たんだ」
後方からかけられた突然の声に驚きながらも振り返ると、一人の少女が立っていた。年齢は……10歳かそこらだろうか。その手に紙袋を持っていることから、何処かで買い物をしてきたのだろうと窺える。ほとんどの店が閉まっているため、どこで買ってきたのかまでは分からなかったが。
「驚いたでしょ?静かな街で」
「うん…正直、商業で栄えている街には見えないかな」
「昔はこんなんじゃなかったの。最近は……物騒だから」
少女の言葉に、クライサの顔つきが変わった。
「物騒って…?」
何か事件でもあったのだろうか。
少女は口を濁していたが、暫くすると、重々しく言葉を紡ぎ出した。
「ここ最近…この街に化物が出るようになったの」
「化物?」