ロウが兄と共に訪れた食堂にいたのは、見慣れた空色と赤色、そして白色の三人組だった。テーブルの上で何かをしているクライサの隣にラビが、向かいの席にアレンが座り、彼女の手元を覗き込んでいる。
「あ、ロウとユウさ!」
「こんにちは、ロウ」
「ラビ兄、モヤシ、何やってるの?」
アレンですって、と苦笑する少年を無視して、ラビとは反対側のクライサの隣に座ってその手元を覗く。それに気付いたクライサが微笑んでみせた。
「クラ、何作ってるの?……紙飛行機?」
「そうそう」
彼女が両手で折っているのはオレンジ色をした正方形の紙で、テーブル上には同じ色の紙飛行機がいくつも転がっている。どれもクライサが折ったものらしい。
「この間任務で行った村で折り紙もらってさ。せっかくだからちょっと折ってみようと思ったら、意外に熱中しちゃって」
「クライサの紙飛行機、すごくよく飛ぶんですよ」
「折り方に特徴あんだよなー。誰かに教わったんか?」
「ああ、お兄ちゃんにね」
「お兄さん?」
「お偉いさんから届く嫌みの手紙をね、よくこうやって折って飛ばしてたんだよ。それがよく飛ぶからさー」
「…………」
「クライサのお兄さんって……」
話を聞いていたロウが、テーブル上に置かれたまだ折られていない紙に手を伸ばした。ピンク色のものを手にとると、それをいそいそと折り始める。
「ロウ?」
「僕もよく飛ぶ折り方知ってるよ!」
その言葉に、いいこと思いついた、とクライサが手を打つ。ここにいるみんなでそれぞれ紙飛行機を作って、誰のものが一番遠くに飛ぶか競争しようと言うのだ。
頷いたアレンは緑色の、ラビは赤色の紙をとり、馬鹿馬鹿しいと拒否しようとした神田にはロウから半ば強制的に青色の紙が渡される。
「そういえば、なんでクラはオレンジの紙ばっかり使ってるの?」
「あー……癖、みたいな」
「クセ?」
彼女が思い出すのは、赤いコートを着た少年の姿。
「青空に紙飛行機飛ばした時、オレンジが一番きれいだって言った友達がいたんだよ。で、実際きれいだった」
「青にオレンジ…」
「あんまり想像つかないかな?」
実際に飛ばしてみればわかると思うんだけど、と苦笑したクライサがオレンジ色の紙飛行機を手に持ったのを見て、ロウはふるふると首を振った。想像ついた、と。
「うん、確かにきれいだね」
太陽と紙飛行機
鮮やかな青を引き立てつつ、自らも立派に映えるオレンジの紙飛行機は、まるで空で輝く太陽のようだと思った。
【H22/02/02】