神田に妹がいるなんて、知らなかった。

「この子はロウ。神田の妹で、私たちと同じエクソシストなの」

「そっか。あたしはクライサ・リミスクだよ」

「……」

「?」

「ごめんね、この子かなりの人見知りで。ロウ、ちゃんと挨拶しなさい」

「……」

「もう、ロウったら…」

「あーいいよいいよ。あたしが馴れてもらえばいいだけだし。よろしくね、ロウ」

「……おい」

兄に似て整った顔立ちしてらっしゃる、などと若干感心しながら笑ってみせると、背後からドスのきいた声が降りかかってきた。

「気安くロウに話しかけてんじゃねぇよ」

「や、挨拶してるだけですけど」

彼が我が家の兄と同類である事実など、これまでの生活の中で知る機会なんてあるわけがなかったのです。





シスコンは万国共通





握手を求めて差し出した右手は、横から伸びてきた彼女の兄の手によって叩き落とされた。
が、更にクライサの左手が彼の手を叩き落とし、青年と少女の合った視線の間で火花が散る。
目を丸くしているロウの両隣で、リナリーとラビが溜め息を吐いた。

「妹が可愛いのはわかるけど、あんまり過保護にするといつかウザがられるかもよ。お・に・い・ちゃん?」

「その声音やめろチビ。気色ワリィ」

「あら、お気に召しませんでした?それはどうも失礼致しました、おにーさま」

「テメェ…」

ほどほどにしとけよ、とラビから呆れた声がかかるが、彼ら二人には聞こえていないようだ。
眉間に深い皺を刻んだ神田とニヤリと笑ったクライサは互いに睨み合い、距離をとって拳を握った。
こうなったら誰にも止められない。
顔を見合わせて同時に溜め息をついたリナリーとラビは、きょとんとしたロウの手を引いて数歩後ろに下がった。

「だりゃあ!!」

顔面を狙った拳を仰け反るようにして避け、反動を利用して隙の出来た相手の額に頭突きをかます。
食らったほうはもちろん、繰り出したほうにもダメージが返って一瞬視界がぐるりと回るが、それを歯を食いしばって耐えたクライサはその場で一回転し、頭を押さえて呻いている男の腹部めがけて回し蹴りを繰り出した。
神田は反射的にそれを受け止めようと防御の姿勢をとるが、勢いのついた蹴りは簡単には止まらず、衝撃を受け流し損ねた彼は後方に飛ばされた。
背中から激突した壁は表面が崩れ、細かい瓦礫が倒れた青年に降りかかる。





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