「ラビ、神田」

「アクマは?」

全て倒してしまったのかと問えば、違うと首を振る。どうやら、残っていた数体は戦闘中に突然引き上げてしまったらしい。
イノセンスを奪うことは無理だと判断したのか、はたまた伯爵からの命令があったのか。いずれにせよ、もうこの周辺に敵はいないのだ、些か張っていた気を緩めた。

村人はみな無事だったが、何しろ建物が全壊している。アクマ襲来の原因であるエクソシストが長居するべきではないが、このまま放置して帰るわけにもいかないだろう。
しかし、安全を伝えたことで村に戻ってきた住人たちは、あたしたちを恨むでなく言った。自分たちは生きている、それだけで十分だ、と。

「体よく追い出したかったんだろ。エクソシストがいたら、またいつ襲われるかわかったもんじゃねぇからな」

「神田ったら…またあんたはそういうことを」

あんたたちはあの化け物に狙われてるんだろ?だったら早く安全なところに逃げたほうがいい。なぁに心配するな、村人全員が無事なのだから、建物なんてすぐ元通りに出来る。
そう笑って、彼らはあたしたちを見送ってくれた。人間って、本当に強い。

村を後にして、汽車に揺られながら向かいの人物をちらと見た。
目を伏せた神田の隣で、座席に深く腰掛けたハルが、窓の向こうを見つめている。何を考えているのやら。
ふと彼女がこちらを向き、またニコリと笑った。

(……うーん)

笑みを返し、また彼女の視線は窓の外へ。目をそらしたあたしは、今度はラビと目が合った。

ハルはどうさ?
視線に含まれた質問に、ゆるゆると首を振る。彼は苦笑して、前に向き直った。

(帰る方法が見つかるまで、適当に仲良くしてればいい)

そう、思ってたのに。
アレンやリナリー相手には、それが出来ている筈なのに。

(……手強いな)

あたしたちの戦いは、まだまだ始まったばかりだ。





END.



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