もしかしたら、相手は今あたしたちが捜しているエクソシストなのかもしれない。
一瞬、攻撃に出ようとした体が固まり、それに気付いたらしい相手が剣を振り被るのが、見えないながらもわかった。
一際甲高い、大きな音が鳴り響く。勢い良く振り下ろされた刃を受け止めた右腕が、じんじんと痺れている。
相手は更に力を込め、こちらはじりじりと押されていく。まずい、押し負ける。そう思った瞬間、洞窟の奥から明かりが零れた。
「へ?」
「あ?」
眩しさに一度目を瞑り、ゆっくりと瞼を持ち上げると、目の前には見知った顔だった。相手も驚いた様子でこちらを見ている。
「神田!?」
「チビ!?」
今の今まであたしが闘っていた相手は、長い黒髪をポニーテールにした青年、神田ユウだったのだ。
背後で、明かりが見えたために進んできたらしいラビが、ユウ!と驚いた声を上げた。
「ダメじゃないの、神田。仲間を攻撃しちゃ」
「……気付かなかったんだ。仕方ねぇだろ」
高めの声が聞こえると同時に相手が刀を引いたので、こちらも腕を下ろすと、神田の向こう側に立つ人物が視界に入る。
ランプを持ったその人は、あたしたちと同じく、黒い団服に身を包んだ少女だった。胸辺りまでの茶髪がよく似合っている、18歳ぐらいの少女。ふと目が合うと、彼女はニコリと微笑んでくれた。
「ハル!」
「ラビ、知り合い?」
首を傾げて尋ねると、ラビは簡単な紹介をしてくれた。
彼女はあたしたちと同じエクソシストで、名をハル・イーディスというらしい。クロスって元帥の弟子らしく、アレンの姉弟子に当たるのだそうだ。
よろしく、と微笑まれたので、頷き返してからあたしも自己紹介をした。
「新しい子が入ってたのね。知らなかった」
「ああ、クラはまだ入ったばっかだからな」
「一ヶ月近く留守にしてたからね、あたし」
ちら、と目を向けた先、彼女の腰辺りに巻き付けられた鎖に視線が縫い付けられた。わかるのは、これが、ただの飾りではないということだけ。
(もしかして、)
「お、さっすがクラさ。よく気付いたな」
「察しの通り、これがあたしのイノセンスよ」
あたしの視線に気付いたラビが言うと、ハルが鎖に手を触れた。
神ノ鎖(デュー・チェイン)。
それが彼女のイノセンスの名前らしい。