それからすぐに現場に向かって、ついて来たバイゴットと一緒に鎮圧した(要するに全員ぶん殴って止めた)。
喧嘩していた数人の男たちは、みな酒を飲んでいたらしい。武力的解決を実行すると彼らの酔いもさめて、お互いに謝っていた。
今日のところはとりあえず、そんな些細な問題しか起こっていないようだ。一応気は抜かずにいるけど、テロだのといった心配は無いだろう。
「そんなわけで、これから遊びに行かない?」
「何が『そんなわけで』なのかわかんないけど、丁重にお断りするよ」
大丈夫だとは思うけど、やっぱりサボるわけにはいかない。何が起こるかわかんないしね。
そう答えると、バイゴットはつまらなそうに頬を膨らませた。そりゃーあたしだって遊びたいけどさ。人手足りなくて身代わりに出来る奴もいないしさ。
「じゃあ、か弱き少女なクライサ・リミスク嬢の護衛として、同行していいかな?」
見回りを再開させるべく歩き出したあたしに、駆け出したバイゴットが追い付いた。
隣を歩く彼女の笑顔。……うん、なんか警備とか馬鹿馬鹿しくなってきた。
「か弱くないから却下」
「えー?……なら、お強い氷の錬金術師なクラの友達として、一緒に遊んで回りたいんだけど」
不意に右手をとられて、ぎゅう、と握られた。こうして誰かと手を繋ぐの、結構久しぶりかもしれない。
………。
ま、いっか。
「少しだけ、ね」
もし説教を受けることになったら、耳栓でもしてやり過ごそう。もしそれでストレスが溜まったりしたら、彼女を連れて遊びに行こう(アンタのせいだって笑って、強制的にでも連れ回そう)。
今なら、何だって許せるような気がする。
だって、
(繋いだ手が、温かいから)
END.