青髪の彼女の名はバイゴット・アルゼ、『水漣』の二つ名を背負う国家錬金術師だ。
中央の宝石(アメジスト)と呼ばれる情報屋なのだと大佐から話には聞いていたけど、こうして実際に会うのは初めてだった。
そして情報屋だけあって、あたしが誰だかもすぐにわかったらしい。わざわざ自己紹介する手間が省けて助かるよ。

「で、アンタはなんで細工されたポイで金魚をすくえたのかな?バイゴット」

「おぉーう…そこに気付くとは、さすがクラだね」

お、いきなり親しげな呼び方になってる。別にいいけど。

どうやら彼女はうやむやにして終えるつもりだったらしいけど、あたしは流されません。あれだけ脆いポイで大量の金魚を獲るなんて、普通に考えれば不可能だ(達人でも多分無理だろう)。そこで考えられる手段は、一つだけ。

「あたしは別に、自分の利益のためにやったんじゃないよ?あのオッサンにちょーっとお灸を据えてやろうと思ってさ」

「そんなとこだろうとは思ったけどね。見つけたのがあたしじゃなかったら、もしかしたらバイゴットも注意されてたかもよ」

「えー、あたし何も悪いことしてないのにぃ」

「本来イカサマは悪いことなの」

ポイを渡された時、彼女はそれが細工されていることにも、あの男が不当な稼ぎ方をしていることにも気付いたのだ。それで隙を見て錬金術を使い、ポイを強化した。
彼女の行動は、本来なら咎められるべきかもしれないが、気持ちはわかるので目を瞑ることにする。別に問題は無さそうだしね。

「そういえば、クラはこんなとこで何してんの?」

「何って…警備と見回り」

「サボっちゃいなよ」

「バイゴットが代わりに説教受けてくれるならいいよ」

「それはイ・ヤ」

どうやら遊びに誘おうとしているらしい彼女を適当にあしらうと、少し離れた辺りから今度は数人の男の声が聞こえた。喧嘩のようだ。激しく言い争っているのが離れていてもわかる。
ああもう面倒くさい。どうせ喧嘩するなら他所の地区にしてほしいね。わざわざあたしの担当地区でやるなっての。






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