「……ありゃ。結構通りから離れちゃったね」
女子二人がどの店にもいないことにリオたちが気付いた頃。
30分程前までいた通りからかなり離れた路地裏で、辺りを見回しながらクライサが言った。
店を出て、次はどこに入ろうかと話しながら歩いていた時だった。
後ろから走ってきた男が、セツナの持っていた紙袋(つい先ほど店で購入した物が入っている)を奪い取って行ったのだ。
驚いている隙に、彼の仲間らしいもう一人の男が、今度はクライサの荷物をひったくって行った。
そしてもちろん、彼女らがひったくり被害にあって、そこで終わる筈がない。
荷物は取り返す、奴らに地獄を見せてやる、と逃げる男を追いかけ続けて30分。
少し手間取ってしまったが、無事荷物は戻ってきたし、ひったくり犯たちも憲兵に引き渡した。
それから元いた通りに戻ったが、そこにリオとスバルの姿は無い。
「入れ違いになっちゃったのかなー」
「え、もしかして私たち迷子になっちゃったの?」
「うーん…」
道は知っているから迷子ではないと思うのだが、保護者役の人間とはぐれてしまったのだから、一概に違うとは言い切れない。
かといって迷子ですと認めるのも癪で、クライサは返答を濁すことしか出来なかった。
「ま、歩いてりゃそのうち会うでしょ」
「なんてアバウトな」
広いセントラルシティ、この辺りの地理に詳しくない者同士がはぐれてしまっては、その日中に合流するのは難しいかもしれない。
しかし、はぐれた一組には中央在住の軍人がいて、もう一組のほうにいる国家錬金術師の行動パターンをよく知っている。
そうなれば、こちらが慌てずとも、彼なら必ず自分たちを見つけてくれるだろう。そう判断したクライサは、また別の店へと入っていった。
「…それだけ信頼してるってことだよね」
その後に続くセツナの呟きは、クライサの耳には届かなかった。