もちろん、セツナが困ろうがどうでもいい、なんて薄情な理由ではない。

「リオ」

男の手首を掴み、彼が握っていたセツナの手を放させると、自らのそれと強引な握手を交わさせる。それが、クライサの視線の先で少年がとった行動だった。

「セツナとスバルって付き合ってるんだよ」

「…そういうことはもっと早く言え」

ニコリと、綺麗な笑顔を浮かべて(でも目は笑ってない)彼と握手を交わしたスバルと、リオは目を合わせることが出来なかった。








ちょうど昼時だったからと、四人はまず近くのカフェに向かった。
そこは、リオはもちろん、クライサも中央を訪れた時に度々利用する店で、男女問わず人気が高い。
しかし彼らが店に入った時にタイミング良く二、三組の客が会計を終えて出ていったため、すぐに席に案内してもらえた。
四人席の一辺にクライサとリオが、向かいにセツナとスバルが座り、料理が来るまで詳しい自己紹介や世間話に花を咲かせて。食事をしながらも楽しくお喋りをして。

空腹を満たして店を出た後、彼らが向かったのはメインストリートから一本外れた通り。そこには女性に人気の店ばかりが並んでおり、買い物好きな女性陣のためにリオが選んだコースだった。

嬉しそうにショッピングに繰り出した彼女らを見送り、リオとスバルは店の脇に設置されたベンチに腰を下ろして。
どれくらいの時間が経ったのだろう、嬉々として店を回り続ける女性陣に、彼らは若干の呆れを感じていた。

「女って、ホント買い物長ぇ…」

「女性ってのは大体そうだな。だが、それを待てるのがいい男ってやつだぜ」

「……」

いい女こそ、男を待たせるものだから。
何だか知った風な口調で言うリオと、スバルは目を合わせる。

「…リオさんって、クラのこと好きになる前恋人いた?」

「まーな。これでもそこそこ恋愛経験豊富だから、アドバイスの一つや二つ出来なくはないぜ」

そして何故か男二人で恋愛トークを繰り広げることになってしまい、そのせいで彼らは気付けなかった。
女性陣が入ったと思っていた店の中から、彼女らの姿が消えていたことに。





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