「……で、その二人は?」
気を取り直して、リオは黒髪の少年少女に目を向ける。彼の質問の意味に気付いたクライサが、それに返すべく口を開いた。
「セツナとスバル。実はあたしも最近リオンから紹介されたばっかだから、会ってそんなに経ってないんだ」
「セツナ・カンザキです」
「スバル・ヒイラギです。よろしく」
「リオ・エックスフィートだ」
少女はセツナ、少年はスバルといった。二人ともリオンの友人で、年齢も彼と同じくらいなのだそうだ。
彼らはイーストシティに住んでいるのだが、以前からセントラルに興味を持っていた。
そこで、一時旅を中断し情報収集の拠点を中央に置くことになったのを機に、クライサが彼らに街を案内することを申し出たのだ。
しかし、幼い頃は中央に住んでいたとはいえ、街のことは市民に比べそれほど詳しくない。実際にここに住んでいる者に協力してもらったほうが良さそうだと思ったのだ。
「それで白羽の矢が立ったのがリオだったってわけ。光栄に思いなよ」
「白羽の矢が立つって、良い意味で使われないの知ってるか?」
「知ってるよ。リオが知っててあたしが知らないわけないでしょ、そんなの」
「そーかそーか。よし、歯ぁ食いしばれ」
二人のやり取りを見ていたセツナとスバルは苦笑した。だが、その間に流れる空気はとても穏やかで、かなり親しい様子が見てとれる。彼らは顔を見合わせ、苦笑いを微笑みに変えた。
「……ま、お前やリオンの友達だってんなら、俺も仲良くしてもらうかな」
ふと、リオの目が少年少女に向けられた。
こちらこそ、と笑うセツナ、軽く会釈するスバル。
彼の視線がセツナに定められたのを確認したクライサが、あ、と短い声を上げる。
「特に君とは仲良くなりたいな。よろしく、セツナ」
彼らはどちらも整った顔立ちをしていて、異性にモテるだろうと初対面の時からクライサは思っていた。
だからもちろん、二人をリオに会わせた時、彼がセツナを口説きにかかる可能性が高いということもわかっていた。
そして、現にリオは彼女の手を握ってナンパを実行している(彼の節操の無さには溜め息しか出ない)。
困った顔のセツナ、今なお歯の浮きそうな台詞を口にしているリオ。すぐ助けてやらねば彼女はもっと困ってしまうことだろう。
しかし、クライサは動かなかった。