(四周年企画リク)





『もしもーし、リオ?』

冬に向け、日に日に寒くなってきたセントラルシティ。
肌を刺す空気を感じる度に、南部の温暖な気候が恋しくなる。

そんな秋のある日。
久しぶりの休日にもかかわらずいつも通りの時間に目が覚めて、朝食や部屋の掃除、日課の鍛練も済ませ愛剣の手入れをしていた時に一本の電話がかかってきた。

『今日休みなんだってね?アームストロング少佐に聞いたよ』

クライサからだった。
俺に用があって中央司令部を訪ねに来たらしい。鋼の坊主たちとは別行動をとっているようだ。

『ちょうど良かった。今からデートしようよ』

今日ほど神様とやらに感謝したことが、これまでの人生であっただろうか。





中央珍道中(仮)





やっぱり、神様なんていないと思った。

「あ、いたいた!セツナー!」

噴水の前に立つ人物に向かって笑顔で手を振る少女の背中を見ながら、リオは深い深い溜め息をついた。

あの電話の後、すぐにクライサと合流して。
公園に行こう、と随分テンションが高い様子の彼女の後を、顔がにやけるのを必死に堪えながらついて行って。
今日はあの店に連れて行ってやろうか、いやあちらの店だろうか、なんて考えているリオをよそに、彼女は足早に目的地を目指した。

そして、中央で一番大きい公園の、噴水の前。
そこに立つ二人の人物の元へと、クライサは駆けていった。

長い黒髪に黒眼の少女。
もう一方は、黒い短髪に同色の眼を持つ少年だ。
見慣れない二人組だが、クライサの友人だろうか。

「……ちょっとリオ、何その顔。テンション低すぎでしょ」

「文句言いてぇのはこっちだ。デートなんて言って期待させやがって…」

「期待?」

首を傾げる少女に、何でもない、と溜め息混じりに返す。ああもう、鈍感にも程がある。

「この二人に中央を案内しようと思ってたんだけどさ。中央のことならあたしよりリオのほうが詳しいでしょ?だから、Wデート」

「……ああ、そういうこと」

紛らわしい。リオは呆れ気味に、本日何度目かの溜め息を吐き出した(一体どれくらいの幸せが逃げていったんだか)。





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