高級そうな料理を食べまくり、会場に流れる曲に合わせて踊ってみたり、他の参加者たちと談笑したり。ほどほどにパーティーを楽しんでいると、いつの間にやら一時間程経っていた。

「……動いたね」

「……みたいだな」

周囲を見回せば、会場にいた筈の招待客のうち半分近くが姿を消している。オークション会場へと移動したのだろう。クライサは隣に立つエドワードと顔を合わせ、同時に頷いた。
カノンとカナタは別行動を取っていたため、ここにはいない。会場内にも姿は無いから、おそらくオークション参加者について行ったか、建物内を探っているのだろう。

クライサはスタッフと思われる男(ミッドウェイの部下だろうか)の元に歩み寄ると、わざとらしいまでの笑顔を浮かべ、小声で話しかけた。
ちょっと小耳に挟んだのだが、このパーティーでは闇オークションが開催されるらしいじゃないか。軍には内緒で、自分たちも参加してみたいのだが、と。

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

下手に忍び込むよりは、こちらも味方だと思わせて迎え入れてもらうほうが数倍楽だ。まあその場合、しらばっくれられたり、相手にしてもらえなかったりという可能性もあるのだけれど、今回はその心配は無いらしい。
案内された部屋に入ると、主催者である男が彼らを迎えた。

「ミッドウェイ博士、あたしたちもオークションに参加してみたいんだけど……ダメかな?」

「とんでもない!そう言って下さることを期待して、あなた方の分の特別席を用意しているんですよ」

眼鏡をかけた細身の男は、部屋の奥に設置された扉のほうへと歩いていく。クライサとエドワードがそれに続き、彼らが扉の前に立ったことを確認すると、ミッドウェイはドアノブを引いた。
開かれる扉。彼らに道をあけるように立つミッドウェイ。背後に、人の気配。

「……これはどういうことかな?博士」

「まずは部屋に入ってくれますかな、氷の錬金術師殿」

扉の向こうにいたのは、多くの人間だった。先程の招待客たちではない、黒い衣服に身を包んだ強面の男たち。
そこはオークション会場ではなく、窓も家具も無い、ただの広い部屋だった。





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