「ある筋から情報が入ってね。そのパーティーで、闇オークションが開かれるらしいんだ」
「……なーるほど」
「だから、あたしとカノンか」
要するに、その闇オークションとやらをめちゃめちゃにしてやれ、というのが今回の任務内容らしい。思っていたよりシンプルだ。
彼女らは招待客として会場に入り、オークションにも参加する。それで頃合いを見て中で一暴れして、それを合図に待機させたクライサの隊を突入させる。それが今回の作戦なのだそうだ。
「国を代表する暴れん坊二人にはピッタリだろう?」
「否定はしないけど、なんかすんごいムカつくね」
「そうだな」
ちなみにパーティーは今夜行われるらしい。まったくもって急なことだが、今更文句を言っても仕方ないのだろう。それがわかっている少女二人は、恨めしそうに上司を睨むだけにとどめ、すぐに準備に取りかかった。
「あーあ。さっさと済ませて帰りたいなー」
大きな門をくぐり抜け、これまた大きな屋敷に足を踏み入れた。広間にはいくつもテーブルが設置され、その上には豪勢な料理が並んでいる。楽しそうに談笑しているのは、あからさまに金持ち風な出で立ちの招待客たちだ。
「科学者宅のパーティーだって言うから、もっとこじんまりしてるのかと思ってたけど…」
「貴族様の晩餐会みたいだな。どこにこんな金があるんだか」
豪華なドレスを身に纏い、パーティー会場の中央付近で周囲の様子を窺うのは、先の少女二人。
何故子どもがここに、と言いたげな視線を他の招待客たちが送ってくるが、そんなものは気にも留めない。
クライサとカノンがロイの代理として出席する、ということは既に連絡してあったので、特に問題もなく入場出来た(招待状を提示しただけで通してくれた)。
警備員もそれほど多くはないようだし、任務は思っていたより楽にこなせるかもしれない。だからこそ、オークションが始まる時間が待ち遠しくて仕方ない。
「二人とも、殺気もろに出しすぎ」
「ったく、気付かれたらどうすんだよ」