「さて、どうやってアイツらまこうか」
いくら人目につかない、人気のない路地裏と言っても、いつまでも此処にいては見つかってしまう可能性も低くない。だが場所を移動するにしても、カノンを探す軍人の数が多すぎる。路地を出た途端、バッタリ、なんてことも有り得る。
策を巡らすクライサを、カノンは目を丸くして見た。
「ロイに伝えないのか?オレのこと」
「お兄ちゃんに?なんで」
カノンとしては、てっきり上官に尋ね人の所在を知らせるのだろうと思い込んでいたので、真逆のことを考え出したクライサを疑問に思うのは当然だ。
だがクライサとして見れば、非番である自分がどうして軍に力を貸してやらねばならないのかと、それが逆に疑問だった。
「カノン、見つかったら当分外に出られないでしょ?」
説教の続きプラス逃げ出したことのお咎めで。続けた言葉に、彼女は苦笑する。多分その通りだよ、と。
「せっかく友達になれたのにさ、それじゃ一緒に遊べないじゃん」
「……友達?」
「そうでしょ?お互い名乗って握手して、その時点で、アンタとあたしはお友達」
さも当然だと言わんばかりに胸を張って言ったクライサ。楽しそうに笑った顔に、カノンがつられる。小さく吹き出して抑えた声で少女が笑うと、クライサは立ち上がり手を差しのべた。
「行こう、カノン」
鬼ごっこしよう、軍人どもと。
未だ笑みを浮かべたまま、互いにその目を見つめる。カノンは頷き、目の前の手を握った。