ある晴れた昼下がり。
せっかくの非番の一日を、ただ家で過ごすのは勿体無い。洗濯や掃除などの家事を済ませると、買い物がてらメインストリートをぶらぶら歩くことにした。
店の前を通り過ぎる度に声をかけられ、人懐っこい笑みを店員に返し。いつも通りの平和な街並みに(少し退屈に思いながらも、)安堵していた。
……それが気のせいだったということに気付くまで、それほど時間はかからなかった。
リアル鬼ごっこ
「……」
「……」
空色と銀灰色がかち合う。
クライサは空を仰ぎ、
(今日の夕飯何にしよう)
現実逃避を始めてしまった。
事の始まりは、果物でも買いに行こうかと通りの角を曲がったところ、野良だと思われる斑の猫を見かけたこと。
せっかくの暇な一日だ。野良猫と戯れるのもまたいいだろう、とその後を追い狭く人気のない路地に入ったところ、猫にしてはやけに大きい影を見つけた。不思議に思い、路地の奥、通りからはほとんど見えないであろう位置まで足を進めると
「……あー、」
若葉色をした髪を携えた、自分と同じくらいの年頃の少女を発見してしまった。
そらみろ、ひと一人の日常なんて、こうして簡単に崩れ去ってしまうのだ。
……いや待て、ここで何も見なかったことにして踵を返せば、この非日常もまた背を向けてくれるのではないか。
(ああ、でも)
性格上、この面倒くさそうな(しかし面白そうな、)事態を自ら避けるなんて出来なくて。目を合わせた少女に、声をかけている自分がいた。