ポン、と手の中に置かれた小さな包みを、丸くした目で見下ろした。
白い包装紙を纏ったそれは厚紙で作られた箱のようだ。
丁寧に巻かれた青いリボンが可愛らしい。

「……何これ」

「チョコ」

渡された意図をはかりかねて、目の前に立つ少女と視線を合わせれば、何を当たり前なことを、とでも言いたげな顔で返された。





ロシアンルーレット





「今日はクリスマスなんだって」

バレンタインだよ。どんだけ先取りしてぇんだよっつーか有り得ない間違え方するなよ」

「……へぇ、『ばれんたいん』ねぇ」

さも当たり前のように言った少女にいちいちツッコミを入れてやっている少年軍人に内心拍手を贈りつつ、再び手元の箱に目を落とした。
言われてみれば、確かにチョコレートの甘い香りが漂っている気がする。

「クリスマスってのはね、リオンの世界での行事で、女の子が好きな人やお世話になってる人にチョコとかを渡す日なんだって」

「バレンタインだっつーの」

「だから、あたしもそのクリスマスってのに便乗してみようかと思って」

「それで通す気かコンチクショウ」

「リオン、もう流したほうがいいと思うけど…」

「心配するなシアン、次言ったら必殺ツッコミ(=発砲)してやるつもりだから」

「ごめんなさいもう言いませんバレンタインです」

まあつまり、この箱の中身はチョコレートで、クライサからの感謝の気持ちということらしい(彼女のことだから、どうせこれも形だけだろうが)。

「休憩時間にでも食べてよ。疲れた時は甘いものっていうし」

「ああ。サンキューな」

ロイやらハボックやら、司令室内の全員が笑顔でクライサに礼を言い、彼女もまたどういたしましてと笑っている。
そこで軍人たちは仕事に戻ろうとしていたのだが、あのクライサ・リミスクがそんな微笑ましい終わりを許すわけがなかったのだ。
図書館で待っているらしい鋼の兄弟の元に向かうため、部屋を後にしようとした彼女の言葉に、ホークアイ以外の全員の手から包みが落下した。

「男みんなでロシアンルーレットを楽しんでねー」

「「ちょっと待て」」





いらない
(遠慮しないで貰っときなって)
(いらねぇよ)
(ちなみに何入れたんだ?)
(色々。)





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