五日前に命じられた任務を無事に終えて、教団本部に帰還したのは日が傾きかけた時間だった。
一緒だった探索部隊と別れ、任務終了の報告のため室長の元へ向かう。
しかしエクソシストの少年を迎えたのは、白衣を纏う男たちの疲れた顔でもなければ黒髪美少女の笑顔でもなく、
「あれ、雅、帰ってたんだ」
半壊した建物の中で激しい攻防を繰り広げる、空色の少女と謎のメカだった。
黒の教団壊滅未遂事件再び
「……何してんの?」
「うーん、話すと長くなるんだけど」
メカが繰り出すレーザーを右に左にひょいひょいと避け、息を切らした様子もなくこちらの問いに返してくれた。
なんでも、例の室長がまた怪しげな発明をし、更にまたそれが故障して、周囲のものを手当たり次第に破壊し始めたらしい。
生憎戦闘員は出払っていて止めようがない、という時にちょうど帰ってきたのが空色の少女ことクライサで、かれこれ三十分ほど攻防を続けているそうだ。
その割には、彼女には怪我をした様子も疲れた気配も無く、それどころか楽しんでいるように見える。
何と言うか、すごい(色んな意味で)。
かく言う雅も、以前コムリンとかいうふざけたメカに襲われた経験があり、また同じことがあるなら今度こそ逃げよう、と心に決めていたのだが……まあ、クライサが相手をしているならとりあえず安心だろう。
「クライサ、コムイどこにいる?」
「んー、リーバー班長たちが簀巻きにしてたから、多分その辺に転がってるんじゃないかな」
「……そっか」
さっさと報告を済ませて部屋に帰りたいのだが、『その辺』を探そうにも戦闘が危険過ぎてその場から動けない(周囲で見守っている科学班もろもろも同じらしい)。
それに気付いたらしいクライサが、体勢を整えて拳を握った。
「ちょっと待ってて。今終わらせるから」
彼女がニッと笑うと同時に、大きな機体が天井すれすれまで飛び上がる。
少女を着地地点に定め、勢いをつけて落下してきたそれに、クライサは眉一つ動かさずに拳を突き出した。
鏡が割れるような音と共に、凍りついた巨体が粉々に砕ける。
破片が全て床に落ちて漸く、イノセンスを腕輪に戻した少女がこちらに振り返った。
「おかえり、雅」
「……ただいま」
おかえり、の笑顔
(カムバック平凡な日常)