「「あ」」

東方司令部、とある廊下。
両腕に書類を抱えて歩いていたシアンは、前方からやって来る男に気付いて声を上げ、同時に彼も微かに目を見開いた。

「エックスフィート大尉、またこっちに来てたんだな」

「または余計だ。今回は仕事」





ナンパ撲滅





長い黒髪をポニーテールにした珍しい風貌と、成人男性の中でも高い身長が人目を引く、リオ・エックスフィート大尉。
本来中央司令部勤務の筈の彼だが、事あるごとに東方で会うので顔見知りになってしまった。
楽しそうなことを探してやって来ているらしいが、仕事はいいのだろうか。

「さて、じゃあ俺は行くわ」

「珍しいな。いつもなら昼飯とかに誘うくせに」

「仕事中なんだろ」

書類を抱える腕を指されたので、ああ、と納得した。
確かにこれだけの束を運んでいれば、随分と忙しそうに見えるだろう。

「これ資料室に運んだら、午前の仕事は一段落するんだ。これから昼休み」

「そうなのか?なら誘う。昼飯一緒にどうだ?」

「……」

あまりの変わり身の早さに溜め息を一つ。
まあ、リオが誘ってくる時は毎回彼の奢りなので、よほどの理由が無い限り拒否はしないのだが。

「じゃあ資料室まで付き合ってよ」

「了解。その後は食堂デートだな」

「はぁ?街のほう行くに決まってんだろ。高い店で一番高いの食ってやる」

「おま、せめてもう少し遠慮しろよ」

「やだよ。大尉にナンパされた時は相応の返事をしてやれ、ってリオンに言われてんだ」

「あいつ…」

「この要望が叶えられないなら…そうだな、デートは無しで」

「は!?なんだよ付き合い悪いな!」

「そのぐらいじゃなきゃ割に合わないだろ」

「…お前、時々本当に辛辣だな」





たまにはやさしくしてよね
(大尉にはこういう態度でいいってクライサが)
(やっぱりあいつか!!)





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