(四周年企画リク)
「およ?」
上司に報告書を届けるため、やって来たのは東方司令部。
歩き慣れた廊下で部下たちに挨拶を返していると、前方に見慣れた人物二人を発見した。
金の短髪で長身の男と、自分と同じ色をした小柄な少年。
次の瞬間には、もう駆け出していた。
空色の君
「シッアーン!!」
「うわぁっ!!」
背後からタックルよろしく飛び付いた。
両腕を首に回し、体を密着させるようにぎゅうと抱きつくと、隣に立つくわえ煙草の軍人が呆れ顔になる。
「よう、クライサ」
「久しぶりだね、ハボック少尉」
笑顔で返すと、腕がバシバシと叩かれた。
おっと、ギブアップのようだ。
それでも解放はせず、腕の力を緩めると、前方から少尉と同じ呆れた声が聞こえてくる。
「……クライサ」
「はいはい?」
「はなせ」
「や」
司令部内で彼を見つけると、必ずと言っていいほど抱きついている。
それもわざわざ背後から。
ほぼ毎回そうしているので、最初の頃はいちいち怒鳴っていた彼も、いつの間にか黙って受け入れるようになっていた(怒鳴るだけ無駄だと学習したんだろう)。
たとえば怪我をしていたり、不機嫌だったり、本気で嫌がる時にはやらないようにしているので、彼も拒絶しないでくれるんだろうけど。
「ほんと仲良いよな、お前ら」
「え、そう?」
「そうでもねぇよ」
いやいや、別に仲が悪いわけではないけど。
「…そういえばあたしたち、プライベートで一緒に出掛けたりとかしたことないよね」
「え、他の奴とは出掛けてんの?」
「うん。リオンとか」
考えてみると、一緒に昼食をとりに行ったことすらない。
旅に出てからはもちろん、司令部で仕事をしていた頃でも。
……あれ、もしかしてあたしたち、仲悪い?
いや、そんなことはない筈だ。
「そのわりには、親友や恋人レベルの挨拶だよな」
「そんなレベル高いの?」
「そもそも挨拶なのかコレ」
毎度疑問なんだが、なんでそういう行動を?
少尉に問われ、首を捻る。
や、だって。
「特に理由は……強いて言うなら衝動?」
「なんだそれ」
「だってちょうどいい高さなんだもん、抱きつくのに」
「お前にだけは言われたくない」
やめられない
(それに、シアンの背中きもちいーし)
(……あっそ)