繰り出される攻撃、特に足技は鋭く重い。
直撃を受けないようギリギリで避けながら反撃行動に出るが、こちらも惜しいところでかわされ勝敗が決する気配はない。
あまりぐずぐずしていては仲間が援護に来てしまうかもしれないと、シアンは気が気でなかった。

「この…っ」

両掌を合わせ、床に触れ、いつも自分が使っているような二本の短刀を錬成する。
相手は少し驚いたようだったが、隙は見せずに腰付近からナイフを、これまた二本取り出した。

キィン、と甲高い音だけが静かな室内に響き渡る。
互いに息は上がっていない。
それはさながら剣舞のようで、軽やかな動きはそこに第三者がいれば誰もが見惚れるもの。
二人の目には互いの姿しか入っておらず、相手の攻撃防御にのみ全神経を集中させている。

研ぎ澄まされたナイフを刃で受け止めると、ひゅ、と風切り音。
反射に運動神経を委ねれば、半ば自動的に動いた体が彼の蹴りを避ける。

その、一瞬。

こちらから繰り出したハイキックが、彼の頭部を掠った。

「……っ」

帽子が外れ、パサリと音を立てて床に落ちる。
ずれたサングラスを定位置に戻す仕草。
柔らかな短い空色の髪が、帽子の拘束を逃れ風に揺れる。


…………空色?


疑問を抱き、相手の姿をよくよく見れば、空色の間、左耳で光る二つのピアスを確認した。
銀色のリングピアスと、赤いボールピアス。
それを持つ、自分と同じ髪色の人物を、シアンはただ一人だけ知っていた。

「……クライサ?」

ピクリ、と体を震わせた相手がこちらを向く。
持ち上げた右手でサングラスを外せば、見慣れた空色と目が合う。
何故自分を知っているのかとでも言いたげな、見知った顔がそこにあった。

彼はーーいや彼女は、シアンのよく知る人物、氷の錬金術師、クライサ・リミスクだったのだ。






[index]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -