幸い鎖や縄による拘束はされていないため、錬金術で鍵のかかった扉をぶち破り部屋の外に出た。
見張りは立てていなかったのだろう、廊下に人の姿は無い。

「必ず助けに来るから、ここで待っててくれな」

無くなった扉の代わりに、厚い氷の壁でそこを塞ぐ。
下手に彼女らを連れて逃げ出し組織の者と鉢合わせてしまえば、これだけの人数を庇いながら戦うのは不利過ぎる。
こうして外から手を出せないようにしておけば、彼女らが人質にとられることはないし、シアンが戦っている間は安全ということになる。

先に組織の者を全員倒してしまってから、そこで彼女らを解放してやったほうが安心だろうと判断し、シアンは慎重に廊下を歩き出した。








あの部屋以外に少女が捕らわれている様子は無く、鉢合わせた男たちを他にバレないように地に臥せていく。
やはり自分の今の姿には抵抗があるが、スカートでなかったことだけが唯一の救いだ。

「…おっし。これでこの階のやつは粗方片付けたかな」

建物の大体の構造はわかった。
三階建ての廃屋で、シアンたちが閉じ込められていたのは三階。
二階三階を回ってみたところ、倒した敵は三十人弱。
リーダー格らしき者はいなかったから、おそらく一階にまとまっているのだろう。

(リーダー格って大体最上階でふんぞり返ってるもんだと思ってたけど、例外もいるんだな)

ぼんやりとそんなことを考えながら階段を下りていく。
一階に下り立ち、扉の開け放たれた部屋に忍び込んだ時、シアンの背筋を何かが駆け抜けた。

「うわっ!?」

それは殺気に似たもの(闘気とでも言うべきか)。
鼻先を人の足らしきものが掠り、反射的にそれを避けたシアンは後方へ跳ぶ。

忍び込んだそこにいたのは、一人の子どもだった。
目深に被った帽子と大きめのサングラスのせいで顔は見えないが、服装からして少年だろう。
こんな子どもまで、こんな組織に与しているのか。

少年は口を開かずに戦闘体勢をとる。
その様は戦闘に慣れた者のそれで、他の男たちとは明らかに違った気配が彼にはあった。





[index]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -