さてさて。
メインストリートの端まで来て、漸く折り返し。
長かった罰ゲームもあと半分だ、と深い溜め息を吐き出して。
たまたま向けた視線の先に、数人の男によって狭い路地に連れ込まれようとしている少女を見つけてしまいました。

(オレの馬鹿!!)

考えるより先に動いた体。
集団の中に割って入り、少女を背後に隠して男達と対峙する。
その際彼女の腕を掴む男をハイキックで倒せば、テメェ何者だ、と彼らに問われ。
漸くそこで、我にかえった。

(オレ今女装してんぢゃん…!!)

軍の狗に喧嘩を売ろうなどという馬鹿な連中でなければ、ここで自分の名前を出してしまうのが収拾をつけるのに一番楽。
だが今、自分はシアングレス・シルヴィアだと名乗ってしまえば、女装していることがバレてしまい、恥ずかしいどころの話ではなくなる。

どうしたものかと頭をフル回転させながら前方の男たちに注意を払っていたため、背後から迫るもう一人に気付けなかった。
後頭部に鈍い痛みを感じ、そこから後は何も覚えていない。
気付いたら、コンクリートの壁に囲まれた部屋にいた。

まあ、つまり拉致られたと。

(情けねぇ…)

暫しの間項垂れた後、座ったまま室内を見回した。
倉庫のような造りになっているらしく、人が暮らすための部屋ではないのだろう、家具の見当たらない室内には木箱やらの荷物も無い。
代わりに、部屋には十数人の少女が押し込められている。

(人身売買の調達班だったってわけか)

室内の少女はみな怯え、数人ずつ固まって部屋の隅で震えている。
まったく、下らないことをする奴はいつになっても消えそうにない。

さて、どうするか。
このまま大人しく捕まっていていずれ商品にされる、なんて死んでも嫌だ。
一暴れして逃げ出すついでに組織を潰してやるのを前提として考えるが、戦える者が自分一人な上に建物の間取りが全くわからない。
それ以前に、ここは何処なのだろうか。

(郊外かな…?イーストに近ければ何とかなりそうなんだけど…)

部屋には窓もついていないし、少女たちに尋ねてみてもわからないと震えているだけだし。

(…とりあえず、暴れてみっか)






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