市内の見回りを終え、司令部に戻ってきた時のことだった。

門を通り過ぎ、敷地内に足を踏み入れたところ、正面から見知った人物が歩いてくる。
いや、走ってくる。

「リオン」

見慣れた茶髪の軍人の名を呼ぶと、彼もこちらに気付いたらしく速度を緩めて立ち止まった。
見回りは済んだのかと問われたので頷けば、お疲れ、と労いの言葉をかけられる。

「リオンはどこに行…」

「悪いな、シアン」

どこに向かおうとしていたのかと問う前に、両肩に手を置かれた。
わけが分からなくて見上げれば、普段見せないような、満面の笑みを浮かべているリオン。
その笑顔が怖い。
何だか凄く嫌な予感がする。

「シアン!リオンを捕まえろ!!」

そんな声が建物側から聞こえてきたのは、彼が再び駆け出したのと同時だった。





青空コンチェルト





「へ?」

建物側から集団で走ってくるのは、ハボック、ブレダをはじめとするマスタング大佐直属の部下たちだ(ホークアイ中尉は今日は非番。なのでロイのお守りはリオンがしている)。
何だか物凄い形相なのだが、何か事件でもあったのだろうか。

彼らが立ち止まり息を整えるのを待って、何があったのか尋ねた。
すると返ってきたのは、

「ああ畜生、逃げられた!」
「シアン!なんでアイツ逃がしちまったんだよ!?」

「はぁ?」

悔しがる声と責める声。
状況を知らない身としては不可解この上ない。
リオンを捕まえるのが今の彼らの目的のようだが、一体何がどうしてそんなことになったんだろうか。


事は、見回り中のシアンと執務室に軟禁中のロイを除いた面々で、休憩と称してポーカー大会を繰り広げていたことに始まる。
何も無しでは面白くないからと、最下位の一人はもれなく罰ゲームとルールを決めて、数ラウンド。
ハボックとフュリーが二回、ブレダとファルマンが一回ずつ耐え難い罰ゲームをこなし、もう一ラウンド終えたところで事件は起きた。

その回で最下位になったリオンが、罰ゲームをやらずに逃げ出したのだ。






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