「…そんなに死にたきゃテメェらから殺してやるよ。覚悟はいいんだろうな」

胸ぐらを掴む手の力が弱くなったかと思うと、身体を床に乱暴に叩き付けられた。
痛みに小さく呻き声を漏らすが、怯んでいる暇はない。

「心配しなくても、あっちのガキも後で殺してやるよ」

向けられた銃口。
鈍色に光るそれを目前にすると、シアンは

笑った。

「何がおかしーー!?」

男が言葉を口に出し終える前に、シアンが行動に出た。
手錠をされていても、縛られているわけではないので、両掌を合わせるぐらいは容易なことだ。
青白い光が倉庫内に広がり、男たちの顔に焦りの色が浮かぶ。

「テメェ…錬金術師か!!」

錬金術を使わせるわけにはいかない。
引き金にかけた指に力を込めるが、既に遅かった。

ガラスが割れるような甲高い音が響き、次いで耳に届いた銃声。
少年の身体を貫く筈だった銃弾は、床にめり込んだだけだった。

視線を動かし少年の姿を追うと、彼は

「もっとしっかり狙えよな、下手くそ」

壊れた手錠を片手に持ったまま、強気な表情で笑っていた。
自身に向けられていた銃が発砲される前に、錬金術によって手錠を破壊した彼は、横に転がるようにして襲いくる銃弾を避けたのだ。

邪魔くさそうにカツラを外すと、現れた空色の短髪。
再び両手を合わせドレスに触れ、それを分解していく。
いざというとき動きやすいようにと、中には薄手の普段着を着ていたのだ。
いつまでもドレス姿でいなければならないなんて、考えたくもない。

ドレスの中心部から縦に裂くようにして繊維を分解し、まっ二つに切り離す。
服の機能を失ったそれを床に放ると、改めてシアンは男たちに目を向けた。

「…何者だ?テメェ」

サングラスの男の問いに答えるべく、口を開く。
同時に両手を胸の前で叩き合わせ、

「シアングレス・シルヴィア。樹氷の錬金術師だ」

勢い良く床へと下ろした。


手を離すと、それに引っ張られるようにして地面から剣が錬成される。
小型の剣を二つ作り出すと、それらを逆手に持ち、男たちに向かい合った。





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