「………お兄ちゃん。あたし、もう帰りたい」
「それが終わってからだ」
東方司令部執務室。
床に正座したあたしの前には、段ボールの机とレポート用紙の山。
自席でカップに口付けている大佐が、鬼に見えた。
あたしの後方、扉の前に、苦笑しているレオンとエドが立っている。
彼らの助け船は期待出来ない。
(くそぅ…あの研究員が大人しくしてれば、こんな事にならなかったのに…)
結果から言うと、レオンの査定は無事終わった。
スムーズに手続きも済んだ。
二、三日ここにとどまったのち、自分が住む町に帰る予定なんだそうだ。
つまり、『失格』になったのは、レオンでなくあたしだったのだ。
普段から、テロリストのアジトを見つけては一人で潰しに行ったり、悪事を目にしたら一人ではっ倒しに行ったりと勝手な判断ばかりしているため、自制心を大佐によって試されていたらしい。
失格だからといって国家資格を剥奪されるわけではないけれど、こうして『反省文(レポート用紙100枚分)+終わるまで正座』という罰を与えられている。
……あー、足痺れた。
「……お兄ちゃん」
「あと58枚だな。終わるまで居残りだ」
「……エド」
「諦めろよ。今回ばかりは逃げられそうにないぜ」
「……レ」
「ごめん」
「目も合わせてくれないし!?」
心配してくれているからこそ、今回こうして試したという事もわかるので、大佐ばかりを恨めない。
けれど、やっぱり足の痺れは辛いわけで。
(…普段から、もう少し落ち着くようにしよ…)
今後のため、そう心に決めた。
「痺れた痺れたシビビビビ…」
「(クライサが壊れた…)」
「さて、氷のも動けない事だし。お茶でもしに行こうか、レオン」
「全力でお断りさせて頂きます(笑顔)」
「(ブラック降臨…)」
END.
【H20/03/17】