「………あのさ、クライサ」

「ん?」

「これも査定のうちなのかな」

「もしそうだとしたら、あたし、大佐を全力でぶん殴りに行くよ」

査定場所にて問題あり。
あたしは相変わらず万年筆を動かしながら、レオンはやれやれといった様子で会話を交わす。

彼の視線の先には、白衣を着た眼鏡の男。
似たような風体の男が五人、実はあたし達を囲んでいる。
合成獣を相手に出来るほど広い廊下だから、人間が何人かで円を作ったところで行動に支障はないけど。
彼らの手に握られた拳銃やナイフに、またしても溜め息。

「合成獣を生み出した張本人達か…どうしたもんかな、報告には無かったんだけど」

とりあえず捕獲して司令部に連行するか。
処遇は大佐に任せよう。
そう決定し足を踏み出したあたしの前に立ちはだかる、華奢な背中。

「レオン?」

「まだ、査定の途中だろ?」

振り返った顔が、ニコリと笑う。
柔らかいんだけど、なんだか有無を言わせない感じがして、あたしは自然、一歩後ろに下がった。
合成獣達を連れて行かれては困る、とか、こいつらで国を切り取ってやるんだ、とか怒鳴りながら、ナイフを持った研究員が襲いかかってくる。

(錬金術師一人に片付けられるようじゃ、国家転覆なんて到底無理だね)

三人の男をヒラリとかわし、レオンは廊下の先へ向かって駆け出した。
拳銃を持った二人が発砲するが、その腕はあまりにずさんで、弾は彼の体をかすりもしない。

この廊下を真っ直ぐ行って、突き当たりを曲がれば、確か中庭に着く筈だ。
レオンもそれをわかっているのだろう(先程、合成獣退治のために行ったから)、より自分に有利になる地形を選んでいると見える。
中庭は、建物内より広い上に、一面草木に覆われている。
植物の錬成を得意とするレオンにとって、戦闘を行うに(この敷地内では)最適の場所と言えるだろう。






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