違う。
違うんだよ。

あたしが心配してるのは
あたしが不安なのは

(あたしが『レオンの査定』に手を出さないかって事なんだよ…!!)


レオンの実力は、あのエドの折り紙つきだから、心配は正直全くしてない。
退治に失敗した合成獣に襲われるかも、なんて不安も全くない。

あたしが不安に思っているのは、最後まで監査を続けられるか、って事だけだ。

(……だって、)

『君が手を出した瞬間、失格だ』

なんて、大佐が真顔で言うんだもん。
最後まで見守る自信はあるけど、『もしも』を考えると、体が固くなる。
……あーあ、大佐が余計な事言わなければ良かったのに。

建物内の廊下を歩いていくレオンの背を眺めて、溜め息をついた。



(おっと、いけない……ちゃんと仕事しなきゃ)

懐から取り出した万年筆を、サラサラと紙の上を滑らせる。
前を見れば、なお足を進めるレオン。
振り返れば、彼を襲った合成獣が死屍累々とばかりに倒れている(暫くは目を覚まさないだろう)。

思っていた以上だ。
あたしも何度か合成獣を相手にした事はあるし、同じ国家錬金術師のエドの戦いぶりも幾度となく見てるけど。

そこでまた、扉が外れた部屋から廊下(正確にはレオン)に向かって、獅子のような見た目の獣が飛びかかる。
彼は横からの襲撃にもさして動じる事なく、視界の隅にとらえた鉢植えに手を伸ばした。
ブレスレットを通した右手で、鉢に植えられた木に触れる。

青白い閃光。
バチッ、と音がして目を開けると、木の根のようなものが合成獣を捕らえていた。

……植物の錬成は専門じゃないけど、そのうちちゃんと調べてみようかな。
何度見ても、凄いや。
さすが、『樹木』の錬金術師。

「これで建物内の合成獣はあらかた片付いたと思うけど…」

「そうだね。一階から三階、それに地下室も回ったし…この辺で引き上げよっか」

研究所の合成獣はほぼ全滅させた、と言っていいだろう。
…といっても、殺したわけではないので、これからあたしの隊で全頭回収しなきゃならないんだけど。





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