(キリリク)
「氷の。君に監査を命じる」
「………は?」
BLACK OR WHITE
あの素晴らしき休日の翌朝。
呼び出されて執務室にやって来たあたしを確認した大佐の、開口一番がそれだった。
「監査?」
「今日はとある国家錬金術師の査定の日でね」
「とある、ってオイ」
レオンの事だろう。
わざわざ回りくどい言い方をしないで欲しい、面倒くさい。
「……で、監査って何すんの?」
話を聞くと、今回の査定はレポートではなく実戦で行われるらしい。
イーストシティ郊外の錬金術研究所に現れた大量の合成獣を退治してこい、という内容だ。
……そういえば、つい最近問題になり始めてたっけ、あの研究所。
民間に被害が無いから、って後回しにされてたけど。
「出来うる限り片付けろ、という話でな」
「ふうん?全滅させる必要はないって話なの?」
「全部で何体いるのか確認をとっていないからな。全滅させられるか、でなく、戦いぶりが評価の対象になるらしい」
なるほど、それで監査官が必要なのか。
あたしは、たとえ友人でも評価を甘くはしない。大佐もそれを理解してる筈だから、あたしを監査官に任命したのだろう。
「ただし、手を出す事は一切許さないからな」
「んなこたぁ分かってるよ」
人の査定に手を貸すなんて事、いくらあたしでもやるわけないじゃないか。
今回の仕事は監査、監査。
近くで、時に遠くで、見守る事だけが仕事なのだ。