「何があったか知らないけどね、あたし達の管轄内で調子に乗った行動取らない方がいいよ」
そう、この街はあたし達の管轄──というより、この街に司令部があるのだから、周囲の街よりもガードが固い。
あたしの前で事を起こしたのが運のツキだ。
「水色の髪のガキ…まさかお前が…っ」
「氷の錬金術師、クライサ・リミスク」
この街──イーストシティで、あたしの名を知らない者はいない。
男達は皆、顔色を変え
「すいませんでした──っ!!!」
逃げていった。
「…やれやれ。本当にいるんだね、あんなチンピラ」
走り去る背を眺めながら、あたしはポツリと呟き、絡まれていた人物に目を向けた。
「大丈夫だった?」
腰まである長い黒髪、碧の双眸は宝石のよう、身長はあるが華奢な体つき、近くで見るとやはり、相当な美人さんだ。
「大丈夫だよ。ありがとう」
(ん?)
なんとなーくだけど、違和感。
「…失礼ですけど、お名前は?」
「レオン・ラジハルト」
「性別は?」
「正真正銘男だよ」
なるほどね、やっぱり男
…って男!?
「こんな美人な男がいるか──っ!!」
「いきなり俺の存在全否定か」
女も羨むほどの、艶やかでサラサラな髪、整った顔つき、そしてスタイル。
それを併せ持ちながら、男ですと!?
「よし、今日から女に性別変えよう」
「ごめん、無理」
ちっ。
……ま、そりゃそうか。
初対面の人間にいきなり、性別変えろ、なんて言われたって、その通りにする奴の方が絶対おかしい。
(……それにしても、)
「ラジハルトさん?…って、本当に美人さんだよね…」
「あはは…よく言われるよ」
ん?どことなく嫌そうな感じ?
…確かに、男が美人って言われるの、あんまり嬉しくなさそうだしね。