槍は接近戦では使えない。
エドワードは勝利を確信していた。
だが
「甘いよ」
甲剣の先を喉元に突きつけ試合終了。
そう思っていた彼だったが、少女は行動を起こした。
手にした槍を投げ捨て、彼を狙って繰り出した膝蹴り。
命中する寸前にエドワードが後方に避けたため、少女の足は空を切った。
「残念。避けられたか」
忘れていた。
彼女の得意なのは、足技。
それも特注の靴には鋼が仕込んである。
命中したらただでは済まされない。
「ちっ…接近戦もダメか」
正直、こういった大会では彼女と戦いたくなかった。
仲間だから、という理由もあるが、何よりその実力のため。
そう簡単には倒せない。
「スズ!」
構えを解かず、クライサは相棒の名を呼ぶ。
チラリと彼女の方へ目を向けるエドワード。
しかし、アルフォンスの隣に、スズの姿は無い。
「……!?」
疑問に思うのとほぼ同時。
背後に気配を感じた。
そして次の瞬間
「エド────ッ!!」
「なっ…スズ!?…ってギャア───ッ!!!」
力いっぱい抱き締められた。
「赤くなっちゃって…エド可愛い!食べちゃいたい☆」
「食べ…っ!?」
「…ボク達の負けでいいです」
このままでは兄が(色んな意味で)危ない。
アルフォンスが負けを認めた。
…とうとう来た。
『青コーナー、マダムキラー、ロイ・マスタング!!東方の裏司令官、リザ・ホークアイ!!』
「お兄ちゃんはマダムキラーじゃないよ。マダムに限らないから!」
「ツッコミ所そこなんだ」
決勝戦。
クライサとスズの前に立つのは今大会の大本命、ロイとホークアイのペアだ。
(あのクソ兄…勝つ気で来たな…!!)
(リザさん素敵…!!)
余裕の表情を浮かべているロイの横で、ホークアイがホルスターから拳銃を取り出す。
彼女も一応はやる気らしい。
「悪いが勝たせてもらうぞ」
あのロイが優勝したら、どんな事を望むのだろうか。
考えたくもないが
「私が優勝したあかつきには……スズ!結婚しよう!!」
「消えろバカ兄!!!」