瞬殺と言える程早く、第一試合は終わった。
クライサが剣を錬成した時、スズはリオやクライサとは逆の──つまりハボック側の地面を凍らせていたのだ。
そして彼はその異変に気付かず走り出した。
転倒するのは当たり前である。
少女達の作戦勝ち、という事だ。
『赤コーナー、東方の暴走列車クライサ・リミスク!!実力未知数スズ・ナカハラ─っ!!』
紹介文が変わってやがる。
いちいち肩書き言わんでも、名前だけ紹介すればいいじゃないか。
という訳で、第二回戦に突入した。
相手は
『鋼の豆っ子、エドワード・エルリック!!兄のブレーキ役、アルフォンス・エルリック─!!』
「オレよりクライサとスズの方がチビだ!!」
「「んだとコラ──ッ!!」」
強敵、エルリック兄弟。
この二人は錬金術の腕もあるし、頭も良い。
下手な作戦では裏をかかれ兼ねない。
『では、二回戦第一試合…始め!!』
「エドの豆粒ーチビーミジンコー」
「んだとコラ!!ぶん殴る!!」
開始直後のスズからの悪口攻撃に、エドワードは早速ブチ切れた。
あーあ、と溜め息をつくアルフォンスをよそに、彼女へ向かい走り出す。
しかしそれを妨害するように、クライサが彼の前に立ち塞がった。
「邪魔すんな!!」
「やだね。しなきゃエド、スズに暴力振るうでしょ?」
「暴力も何も、先に喧嘩ふっかけてきたのはアイツだ!!」
二人が同時に両手を打ち鳴らす。
エドワードは右手の機械鎧を甲剣に変え、クライサは刃が氷製の槍を錬成した。
「女の子相手に暴力なんて、いただけないなぁ」
「上等だ…お前とは一度ケリつけなきゃ、と思ってたんだよ」
「奇遇だね。あたしもだよ」
構え合った二人。
観客席もが、しんと静まり返った。
「真剣勝負始まっちゃったね」
「司令部が破壊されなきゃいいけど…」
スズとアルフォンスはと言えば、少し離れた所で友と兄を見守っている。
こちらは戦う気は無いらしい。
相手の出方をうかがっていた彼らが、同時に動いた。
クライサが振るった槍を弾き、エドワードが一気に間合いを詰める。
そしてニヤリと笑った。