動かなくなったかと思えば、ゆっくりとこちら側に倒れてくる。
それを軽々と避けると、床に倒れ込んだ彼の後ろに
「トワ!」
彼女の希望、トワが麗わしい笑顔で立っていた。
足蹴にされた兄を心配してやる気は更々ない。
トワは倒れた彼を二度ばかり踏みつけると、笑顔そのままにこちらへとやって来る。
そして彼女の左手を握り、駆け出した。
昇降口へと続く廊下。
教室に向かう階段とは、逆方向だ。
「ちょっ…トワ!授業は…!?」
「あんたのクラス、次は国語なんだってね」
駆ける足はそのままで、僅かにトワはこちらを向いた。
止まる事のない足に諦めを覚え、クライサもまた走ったままで首を振る(ちなみに全力疾走ではない。トワに全力を出されてしまえば、こちらも全速力で走らねば絶対に追いつけない)。
「サボるんでしょ?」
付き合ってあげるよ、と言いたげな眼。
悪戯に笑む口元。
大好きな彼女の表情の中で、一位二位を争う程のお気に入りの顔。
「うんっ」
誰よりも自分を理解していて
誰よりも一緒にいる
誰よりも大好きなあなただから
この気持ちを
誰より、あなたに伝えたい。
そんな
ある日の休み時間。
「ロイ先生ー?何やってんですか?授業始まってますけど」
「エックスフィート…私は教師に向いてないのかもしれん…」
「はぁ?」
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