秋晴れの青い空。
優しく頬を撫でる風。
穏やかに過ぎ行く時間。
こんな日は、やっぱり
September(九月)
一年三組担任、ロイ・マスタングは呆れていた。
「…ロックベル。リミスクとエルリックはどうした?」
「や、よくわからないんですけど…『太陽が呼んでる』とか言って、二時間目から消えました」
「………そうか」
それはまだ夏の余韻の残る、九月のある日。
いつも通りに教室にやって来て、いつも通りに授業を始めようとした三時間目。
席についた生徒達を漆黒の目で見渡したところ、あるべきところに無い色を発見した。
それは金色と、空色。
成績優良生徒、かつ問題児の二人組の姿が無い。
そういえば、隣のクラスで行なった二時間目の授業では、美女桜と漆黒の姿が無かった。
加えて、空色の彼女らも前の時限から消えている。
と、いう事は
(四人揃ってサボリか…)
大方屋上で昼寝でもしているのだろう。
こんなに天気の良い日に、教室で大人しくしているような子供達ではないのだから。
「…昼休み、職員室に来るよう伝えておいてくれ」
わざわざ呼びに行くまでもない。
どうせ、授業の一つや二つサボったところで、彼女らの頭脳には何の支障も無いのだ。
珈琲の薫り漂う職員室で、じゃじゃ馬達に念仏を。
心地よい気温の中。
穏やかな日差しの下。
隣合わせて眠る、美女桜色と空色。
空色の隣には金色が、美女桜色の隣には漆黒が横たわっている。
金色と漆黒が守るように挟んでいる少女二人の手は、堅くしっかりと握られていて。
気持ち良さそうに眠り続ける彼女らを、無粋にも起こそうとするような輩はいなかった。
ある晴れた暖かな日。
風薫る秋の初めの日。
たまには、こんな一日があっても良いんじゃなかろうか。
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